赤玉ポートワインの広告

広 告

赤玉ポートワイン(現在、赤玉スイートワイン)とは、サントリー(当初は壽屋)の創業者である鳥井信治郎が明治40年に売り出した甘味果実酒である。積極的な広告宣伝により大正末期には全国的に知られる商品となっていた。 滋養・強壮を売りにした薬用酒として売り出されたため、その効能を利用し、戦時下の生産力向上の時世に対応し、労働者の疲労回復、体力増強を前面に押し出して、売上増を図った。特に15年9月の新聞広告は、多様な切り口からのコピーを用いながら掲載しているのが興味深い。
16年7月からは商品そっちのけで国策に協力するショートエッセイのみを掲載している。精神訓話広告であり、いわゆる献納広告なのであろう。

酒は百薬の長といわれるが、保健飲料とは行き過ぎ感がある。非常時に必須との理屈を展開しているのだが、囲み枠の「出動」の文字とあわせ、生産力増強が国是のご時勢が伝わってくる。
内容
「病気欠勤を少なくせよ! 非常時だ!仕事の能率をあげねばならぬ!
夏の保健飲料として赤玉ポートワインほど好適なものはありません 夏は食欲が衰えます 食欲が衰えては健康保持は困難です〜 」
掲載:昭和14年9月 

薬洋酒として、効能の理由を科学的に説明出来ることが、人気の秘訣なのであろう。
内容
「疲れ易い人に   疲れを治して元気で働け! 身体が疲れた儘では不愉快で仕事も捗りません。又過労が病気の原因となる事もあります。疲労は早く治して元気でお働き下さい!その為には赤玉ポートワインは最も効果ある飲物です。仕事にかゝる前の此の一杯はよく元気を充実し、休息の一杯は速かに体力を回復する優れた効果があります。
赤玉ポートワインが何故疲労回復に効果があるか? 赤玉ポートワインは、よく熟した葡萄から醸造した天然の純良葡萄酒で、栄養を高め、疲労を恢復する飲料として廣く愛用されて居ります。之の甘味を成している糖分は飲めばそのまゝ体力となる葡萄糖・果糖(疲労恢復に必要な栄養素)で、血の巡りをよくする葡萄酒の作用と相俟って、速やかに疲れを治します。又消化を助け食物の栄養をよく身につける独特の働きは、一杯ごとに体力を増強し、容易に疲れない健康を築きます。
赤玉ポートワイン 天然の熟成になる純良甘味葡萄酒」
掲載:昭和15年9月 

現代からは考えられないコピーであるが、当時の栄養事情では、当たり前の事であったのだろう。
内容
「太れる
夏負けとか夏痩せとか言って、夏になると著しく体重が減ったり、食欲がなくなったりします。 こんな状態をいつ迄も捨置いてはいけません!回復させるののは今です!純良葡萄酒=赤玉ポートワインを召上れ!これは胃腸に手数をかけずに消化吸収されて精力となる葡萄糖・果糖を多量に有し、血液や骨格となる鉄・ カルシューム等をも含んでおりますから、劣へた身体に底力をつけ、ガッシリと太らせます。」
掲載:昭和15年9月 

当時の労働状態が垣間見えるコピーである。
内容
「夜業をする人に   疲れを明日まで持ち越すな!
夜業は昼間の仕事よりも疲れがひどい。又、その疲れは治りにくい。そこで翌日まで身体がだるく、能率も上らぬ、体力も衰えると云う事になり勝なものです。その日の疲れはその日に治して下さい!其には赤玉ポートワインを飲むのが最上の方法です。此には疲労を治すに必要な栄養素(葡萄糖)が豊富にあり、心身を快くする葡萄酒特有の作用と相まって、疲労を早く去り、新しい元気を生みます。
  六十医学博士御推奨  疲れを治す 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和15年9月 

激務にあたっている民衆には魅力的なコピーである。
内容
「力をつける
純良葡萄酒‐赤玉ポートワインは飲めば直ぐ消化されて精力となる葡萄糖や果糖を多量に含み又血液や骨格をつくるカルシューム、鉄、銅等をも極めて吸収され易い形で有しているから、身体に精力をつけ逞しい底力を貯えます。従って力仕事をする人、常に多忙な人が赤玉ポートワインを常用すれば、身体にだんゝ力がつき激務にも、多忙にも充分に耐え得るような強躯になります」
掲載:昭和15年9月 

滋養だけでなく、美味しい事も加えてアピールしている。
内容
「はたらく人の 体力を充実する    先ず栄養の向上を!
体力は栄養から生まれます。だから、体力の充実には栄養の向上が先決問題なのです。赤玉ポートワインは栄養を高め体に底力をつける飲料として定評ある純良葡萄酒で、不純な成分を全く含んで居りません。之の甘味をなしている葡萄糖・果糖はそのまゝエネルギーとなる優秀な栄養素だし、消化を助け食物の栄養をよく身につける天然葡萄酒特有の作用と相まって、栄養を貯え体に元気を与えて逞しい体力を養います。美味 滋養 葡萄酒」
掲載:昭和15年9月 

アルコールの効能について、血の巡りが良くなる、疲労素を追い払うなど感覚的に利用しているが、医学的に?がつく内容ではある。
内容
「根気が続く   疲れた時 飲めばグンと元気が出る
仕事の疲れを早く治すには赤玉ポートワインが最もよい飲物です。之には疲れを治し元気を造る栄養素(葡萄糖など)が豊富に含まれている上に、葡萄から生じた純良の酒精分が適度にあるので、血の巡りをよくし体内に鬱積した疲労素を速かに追い払って、元気を回復します。又、永い仕事にも容易に根気疲れしない頑丈な体力をも養います! 疲れを早く治す 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和15年9月 

滋養に加え、睡眠に対する効能についても、データを使って科学的に説明している。
内容
「活動力を培うには先ず 眠りを深めよ!
睡眠は無形の栄養とも言われて居ります。それは体内の疲労物質を去り新鮮な気力と体力を生むには栄養素と共に絶対に必要だからです。眠りの深さは一定ではなく、寝入りばなだけグッと深い。だから寝つきが悪いと疲労はすっかり回復しません。眠りを深くするには赤玉ポートワインは理想的な飲物です。之の甘美な味と快い陶酔感は、心身の疲れを軽くほぐして寝つきを良くしますし、之のもつ豊富な滋養と共に元気を培う卓効があります。
 眠りを深める 純良葡萄酒 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和15年11月 

疲労回復に加え、入眠にも役に立つとは、まさに万能薬の趣である。葡萄のイラストによって、葡萄酒であることをアピールしている。
内容
「疲れ易い人に 疲れを早く治すには
 疲労回復に何より必要な栄養素葡萄糖・果糖・鉄分などを豊富にもっている赤玉ポートワインは最も有効な飲物です。この純良甘味葡萄酒はすぐに体力となる栄養を補給する上に、血行をよくして体内に滞った疲労素を払い去り、速やかに元気を盛り返す優れた能力をもって居ります。
眠りの浅い人に グッスリ眠れ!
 健康を保ち元気に働く為には睡眠は寧ろ栄養以上に必要です。眠りが浅いと前日の疲れはすっかり取れぬし元気が出ません。よく眠るには寝前の一二杯の赤玉ポートワインは最も効果的です。之の快い陶酔感は疲れた神経を軽くほぐして寝つきをよくし眠りを深めます。〜 純良本格甘味葡萄酒 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和15年11月 

葡萄酒が元気の素とは、現代の栄養ドリンクのようであるが、これが時代のニーズなのであろう。
内容
「明るく元気に働きましょう!
●疲れを早く治し栄養を充実して元気に充ち満ちて働きましょう!●元気を増すには赤玉ポートワインは甚だ有効な飲物です。之は葡萄糖果糖(直ちにエネルギーとなる優秀な栄養素)などを豊富にもち、血の巡りをよくし新陳代謝を助けて気分を爽快にする純良本格葡萄酒です。気分と身体の疲れを早く治して元気を溢れさせます!
元気を培う本格甘味葡萄酒 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和16年1月 

当時の主婦のあり方が表されている。つつましい生活が強制されていることから、イラストも既にモンペを穿いており、これが主婦の一般的な姿だったのであろう。
内容
「主婦方よ!つゝましく生活し、健やかに働こう!
言葉だけでなく実践です。それには、本格甘味葡萄酒赤玉ポートワインを日常飲んで、栄養をしっかり身につけ、体力を充実して、病気や過労の乗ずる隙もない凛たる身構えをまづ作ってください。この身構えあってこそ、実践も容易です。
 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和16年2月 

病気予防には、栄養豊富な赤玉ポートワイン。その心は、健康報国。
内容
「病気のない家庭  お食事時の心得が大切
家族に一人でも病人のいることは、家全体の空気を暗く重くします。心に不安や屈託があっては、折角の御馳走も身につきませぬ。何はなくとも、一家挙って、まづ赤玉ポートワインの杯をあげてから、心たのしく和やかな気分で、食卓についてください。食欲もはずみます。消化力も高まります。栄養も豊かに身につきます。しかも赤玉それ自身、体力を養う栄養素−葡萄糖、果糖、カルシウム分、鉄分−を保有するのですから両々相俟って栄養満ち足り、抵抗力の充実した、鉄壁の健康陣が布かれます。かくてこそ、病魔の乗ずる隙もない、明朗にして幸福な家庭が期待されるのです
 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和16年2月 

この頃の広告には、盛んに劇務という言葉が出てくる。お国の為に身を粉にして働くことが当たり前、いや、せねばならない時代であった。
内容
「お買物心得
お惣菜の買物はしっかりしたお献立の予定を立ててそれに従ってなさるべきです
身体を立派に生長させ、よく働き、健康な生活を営む上に人間は蛋白質、脂肪、炭水化物、灰分、水等の養分を日常万遍なくとらねばならない。そして之らの養分中、その性質上余分に消費されるものはそれだけ余分に補給して支障を来さないよう心掛けねばならない。例えばご主人が劇務に携わっている場合、奥様の心がけとして、毎日の食卓に赤玉ポートワインを備える位の心得はぜひ欲しいものです。何故ならばこの純良葡萄酒の主成分たる葡萄糖果糖は劇務家の最も必要とする大切なエネルギー源だからです。
赤玉ポートワイン」
掲載:昭和16年4月 

いわゆる食前酒としての赤玉を説明しています。
内容
「消化の身構へ
身構えといって別にむずかしいことはありません、食前一杯、赤玉ポートワインを飲めば結構。お食事がとても旨くなります。これこそ主成分たる葡萄糖果糖の働きによって、消化に必要な身構えが見事に整った証拠です。
食欲促す本格甘味葡萄酒 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和16年5月 

日常生活のなかに、赤玉の必要性を上手に落とし込んでおり、イラストも含め親しみやすい広告に仕上がっている。
内容
「疲れを溜めるな
家の内外の掃除でも、手を抜くとすぐ塵埃が溜ると同様、人の身体も手入れを怠ったが最後疲労という埃が積り積って、思いもよらない病気や災いを招き易い。日常赤玉ポートワインのんで、新陳代謝を旺んにし、安眠を得て、常に新鮮溌剌の心身を保つ工夫が大切だ 
新陳代謝を促す本格甘味葡萄酒 赤玉ポートワイン」
掲載:昭和16年6月 

悪疫流行期とは…、まだこの頃は赤痢やチフスどなど伝染病が身近に存在した時代であったことがわかる。
内容
「〜 赤玉ポートワイン食前の一杯は、食欲を促し、消化を助け、栄養をしっかり身につける助けとなる。更に寝前の一杯は、心身を寛げ、安眠を誘い、疲労回復にじつに役立つ。かくて、栄養豊かに、疲労なきところ、抵抗力充実し、病菌のつけ入る隙もない逞しき健体が期待される」
掲載:昭和16年7月 

今回は、商品とは関連のないテーマであり、また、商品の告知もないという不可思議な内容である。しかし、何か意図があるはず。
内容
「健康の為だ!歩け!正しく強く
歩く…陽を浴びて歩く…これ程易しくて男も女も大人も子供も誰も彼もが出来る健康法が他にあるでしょうか!併し引づられているような勢いのない歩き方ではいけません。日本人として恥しくない 様、胸を張り、腰を伸ばし、膝を伸ばし大きく前後に腕を振って、強く正しく闊歩するのです。 成人男子が正しく歩けば大体歩幅八十センチ、一分間約百二十五歩踏んで、一時間に凡そ六キロ進みます。又女子なれば歩幅は六十五センチ余り一分間百三十歩が適当でしょう。これを標準として歩けば、生々と気分がはずみ、姿勢の悪い人も自然と矯正されて次第に健康に近づく…元気一杯胸をはって歩こう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和16年7月 

この広告も、商品とは直接的な関係はないが、日本人の体格向上の必要性について述べているもので、やはり国策に沿った内容なのである。
内容
「猫ほどもある鼠
よく、栄養をとれというが、それは我々が身体を生長させ、働き、生活を営んでいく必要上適当な食物を摂り入れる事をいうのです。或る学者が、鼠にあらゆる栄養物を与えて、親から子、子から孫と続けていくと、鼠の身体が段々と大きくなって、終に猫ほどもある鼠になってしまった。この事実は、いろいろの栄養素を持つ食物を偏頗なく合理的に摂り入れていけば、幾年か後には、比較的貧弱な日本人の身体も欧米人に劣らぬ立派な体格になる事を示しています。やがてわが皇国を背負って立つ我々の子、我々の孫に対する我々の責任は栄養の問題をしっかり会得し、同時にその知識を日常生活の中に実行していく事であります。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和16年7月 

この広告も、商品とは直接的な関係はなく、会社自体のイメージアップを狙っているのであろうか。
内容
「前線の慰問に
倦怠の埃を溜めるなかれ
靴の埃、洋服の埃、帽子の埃、こんな埃なら刷子(ブラシ)で払えばわけなくとれる。慰問袋や慰問の手紙も、時の経つにつれて、兎角倦怠の埃が積り易い。それも少ないうちはよい、厚い層をなしてでも来たらことだ。折柄、四度目の事変記念日を迎えた今日!当初の頃のあの興奮、感激を思い出したら、埃なんぞ溜めてはいられない筈だ。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社 壽屋」
掲載:昭和16年8月 

この広告も、商品とは直接的な関係はなく、戦時下における国民生活のあり方の啓蒙になっており、戦争協力広告の好例ということができる。
内容
「何軒あろうとひと世帯
近隣は国民組織の根本です。いつも親しみあい力を協せ、進んでお国の為に尽くさねばなりません。近隣が互に日常の挨拶を交わし、道路下水を清潔にし、公共のものは特に丁寧に取扱はねばならぬ事は無論でありますが、互に事のあった時は共に喜び、共に悲しみ、又慰め合って、俗にいう、「遠い親戚近くの他人」でありたいものです。又何事につけても互に御近所の迷惑とならぬ様、殊に病人や赤ちゃんが御近所にある時は一寸した物音をも慎む心づかいが必要です。かかる近隣であってこそ国民組織の本たるの任務を果たすことが出来るのです。(文部省国民礼法より)
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年8月 

この広告も、商品とは直接的な関係はなく、主婦の心構えを論じているが、これもお国のためである。
内容
「毎日の生活にもっと計画性を持たせたい
計画なき所必ず無駄ありといわれます。日常どんな些細なことでも計画を立てる習慣をつけたら、まだまだ無駄を省くことが出来る筈です。特に主婦方にこの習慣を養って頂きたく思います。例えばお食事の仕度一つするにも、その日その時の思いつきで過して来た従来の行き方を改め、ぜひ栄養的に計画して下さい。上手に計画すれば、たとへ品数は少なくても、必ず充分栄養をとることが出来、御一家の健康を立派に護ることができます。何がない彼が足りぬと、品物のせいにするのは、むしろ主婦の恥と心得るべきです。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年8月 

昭和16年8月時の4回目の広告である。この広告も、商品とは直接的な関係はなく、国民の一致団結・体制強化を啓蒙するものである。
内容
「君も鎖の一環だ!
一連の鎖が丈夫である為には、そこに連なる一環一環が完全なものでなければならない。若しその中にたった一つでも不完全な環があったが最後、それが鎖全体の弱点となる。小にしては家庭から、隣組から、職場から国家の大に至るまで、その鎖を構成する凡ゆる人が、しっかり腕を組まなければならない理由もそこにある。この際、個人的な感情から鎖全体を弱体化するような考えに走ることは一切捨てよう。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年8月 

戦時下にあっては、戦地でも生産の場でも、強健な国民が必要となり、広告も時世に応じて強健な肉体づくりを訴えるものが多くなっている。強健な肉体は家庭の食にあるとして、主婦の責任を改めて確認している。いわゆる総力戦である。
内容
「お料理の設計
堅牢な家を建てる為には優れた建築家の、優れた設計に俟つことが多い。人も強健な肉体を建設する為には、よき主婦の手になる、よき栄養設計に俟つことが多い。主婦の責任たるまた重大です。主婦方よ!豊富な栄養知識を活用して、いやしくも一家の健康に関する限り何等不安を起こさせないだけの用意が欲しい。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年8月 

ショートエッセイが続いている。昭和16年7月から始まったようだが、時世にあったテーマを軽妙に分かりやすく、しかも国策にそって展開している、作者は誰であろうか?
内容
「鍛錬結構だが過労御用心 
梅雨が上る。灼熱の夏が来る。炎暑が何だ、鍛えろ、頑張れとばかり、威勢のいいのは頼もしいが、それも束の間、そろそろ落伍者が出て来る。どうしたわけかと、だんだん調べて見たら何のこと、無理の上にも無理が重なって、ヘトヘトに参ってしまったのだった、なぞというのは、余りといえば軽率な話。凡そ鍛錬には順序がある。絶えざる努力を以て一歩々々向上を計る、これが鉄則だ。いきなり猛鍛錬にぶつかるから、土台を固めずに 家を建てるようなもので、過労の暴風に一とたまりもない。鍛錬者も指導者も、心すべきは過労であり、その過労のよって来る原因である。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年8月 

スパイに目を光らせているイラストで防諜の重要さを表現している。
内容
「スパイは何処にいる? 
スパイはどこにいて、どんなやり口で仕事をするか?彼等は決して闇にまぎれて目的物を盗み出すなどというような単純なことはしない。全国に張られた合法的な組織網を、合法的な名目で、巧みに利用する。 そこではどんな断片的な情報も細大洩らさず寄せ集められ、丁度積木細工のように組合わされ、纏められて了う。その纏められた結果が、立派な重要機密になっていることは勿論である。だから、こんなこと位とか心易い者ばかりだからよかろうとか、常会だから安心と思うのは、とんだ油断でどんな場合でも敵に利用される怖れある話は絶対避けねばならぬ。スパイの利用する合法的な組織網とは、多くは外国系の銀行会社、教会、社交団体等である。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年9月 

精神論でこき使うのかと思いきや、現代でも行われている昼寝の活用とは、まだ社会に余裕が見られるようだ。
内容
「午睡の励行  職場の過労や結核もこの手で防げ!
午睡というと、如何にものんきに聞こえるが、決してそんなものではない。劇務や残業から来る過労を癒すのに、こんなにも手軽で、効果の高い方法はない。人的資源の確保、能率増進という国策的見地から、真剣に考えるだけの価値は十分ある。最近のニュースにも産業戦士の中に罹病率が漸増するのを憂えて、その有力な防止策の一つとして午睡が取り上げられていることが報ぜられていたし、又事実某工場では早くから午睡制度を実施して好成績をあげているという。過労が能率を下げることはいうまでもないが、最も怖ろしいのは、往々にして結核誘発の有力な原因をなすことだ。それを防ぐための午睡の効用についてもっと深い関心をもつ必要がありはしまいか。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年9月 

全国民の総力戦であることを改めて訴える広告となっている。
内容
「姿なき戦いに打勝て!
昔、戦は戦場だけで勝負がついた 今日の戦争は国家全体、国民全体の戦いだ。武力戦だけで勝負がつくとは限らない。外交の戦い、経済の戦い、宣伝の戦い等姿なき謀略の戦いが世界中で火花を散らして闘われているのです。私共銃後国民は、食料増産に励む農夫も、生産拡充に汗を流す工員も、少ない材料でおいしい料理をつくる主婦も、防空演習を手伝う子供も、皆一人残らず、兵隊さんと同様に戦線にあるのです。私共は毎日戦っているのです!「自分も戦争しているのだ!」と、しっかり覚悟して、みんなが持場々々で御奉公をし、進んで姿のない敵に打勝たねば、兵隊さんの尊い血で贖われた偉大な戦果も全く無になるのです!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年9月 

この文章によると、日本の秩序ある社会は、このような啓発の結果であることが想像される。
内容
「ひとりの不心得者
大勢の人が、雑然と集まると、そこに特異な群衆心理が生まれる。一人々々では教養もあり謙譲の美徳を備えた紳士淑女が、時にとんでもない弥次馬と化すのも、この時である。群集心理の著しい特色は、知能の水準が平均よりもずっと低くなる。と同時に、無暗に□惰性が昂まり、無責任となり、反省自戒の観念がなくなる、といわれる。多人数が集って団体行動をとろうとする時、一番警戒しなければならないのは、この群衆心理の動きにある。例えば、電車やバスに乗るにしても、此の頃でこそ一列つくれが励行されているけれども、それですら、若し一人でも我儘勝手な者がいて、素早く割り込みでもしようものなら、忽ち無秩序、混乱に陥らないとは限らない。たった一人の不心得者の為に、全体が手のつけられない混乱に陥し入れられてどこに文化人たるの面目があろう。我々は、その一人の不心得者を憎むと共に、平素からもっともっと、団体行動の訓練を受けて、たとへどんな切迫した場合にも、そうした不心得者を一人も出さない心構えを養わなければならない。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年9月 

すは、純潔主義か?と思いきや、食物と健康の話であり、戦争遂行の為に国民の健康が重視されていたのであった。
内容
「血の清浄を守る!
人体は絶えずゆるやかに燃えている。食物は恰も燃料に当る。その食物が体内で燃えて消耗された時、残ったものが酸性だったら、その食物を酸性食品、アルカリ性だったらアルカリ性食品と呼ぶ。米や肉や卵や砂糖は前者に属し、果物、野菜、海藻類、お茶などは後者に属する。人間の血は、元来弱いアルカリ性を保っていなければならない。この状態にある時が一番健康に適う。所が、これは食物の選び方でどうにでもなる。例えば白い御飯に肉や卵のお菜を副え、おやつに甘い菓子を食べれば、みんな酸性だから、その結果血液が酸性になる。血が黒ずみ粘ってくる。いくら心臓のポンプが骨を折っても細かい所まで行き亘らせるのが困難になる。それでは困るので、外からアルカリ分を入れてやらない限り、体内にあるアルカリ分を溶かす。骨が細くなり、歯が脆くなる。肩が凝り、頭痛がする。そうならないようにするには、野菜や果物や海藻類など、どしどし食べて、常に血液をさらりと美しい弱アルカリ性に保つように工夫しなければならない。お茶一つ選ぶにもこの位のことはぜひ頭に入れておいて頂きたいと思う。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年9月 

お国のために身命を捧げることが強要された時代。こういう形で刷り込まれていったのであろう。
内容
「君の健康も献納だ
今まででも、勿論健康の大切さはわかっていました。併し、その大切さは個人的のものでした。極端なはなしが、生きようと死のうと自分の体じゃないか、ただ丈夫でなければならない。病気をしてはならぬというのも、つまりは自分の幸不幸に係るからこそ大切なのだ。という考え方です。それで自分も当り前と思い、人も敢て怪しまなかったのは昔のこと、今日はそうは参りません 日本人という日本人の身体はすべて国家に帰一する、そして各自は、国家からお預かりしたその肉体を、恰も兵隊さんが兵器を大切にするのと同じ気持ちで、立派に手入れをし、鍛え、育てゝ、いつでもお役に立つようにする責任がある、というように革って来ているのです。既にそうである以上、君の健康も単に自分だけの問題でありません。献納の心算で、大切にもする、錬成もする、というところまで徹底しなければうそです。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年10月 

防諜の心構えを説いた広告。不平一つでも敵に付け入られるということで、気を引き締めることを縄の結び目のイラストで表わした。
内容
「不平は心の弛み
一人の不平が、切角しっくりといっている全体の結びつきに、思わぬ間隙をつくったり、歩調を乱したりするもとになることは、丁度一本の歯が抜けたばっかりに全体の歯の根がぐらつくのと同じだ。しかも、おそろしいことに、スパイは、えてして、こうした隙をねらって銃後撹乱の毒手をふるい、輿論を自分の思う壺に引摺り込もうとかかる。不平こそは、敵にとって一番乗じ易い隙だ、弛みだ。心の締緒をぐっと締め直して、かりそめにも不平がましい気持ちを抱くまい。まして他人など洩らすまい。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年10月 

お国を護る兵隊にするために、一人でも多く産んで、健康に育てることが、母親の使命であった時代。それを強力にアピールしている。
内容
「母よ! 生れる前の赤坊にも国防の大任が懸っています
まして母自身の任務の重いことなぞ、今更いうまでもありませぬ。早い話、産むということ自体が既に立派な臣道の実践です。併し、産んだだけでは任務も半ばを達したに過ぎません。之を全うする為には、産んだ赤ちゃんを、立派に育て上げなければなりません。近年我国人口の有様は、出生率の低下、乳幼児の死亡、結核による死亡が、諸外国に比べて非常な高率を示しているばかりか、一般の国民体位も、も一つという所だとのこと。深く思いをここにいたす時、母たるもの、一大勇猛心をふるい起して、まづ自ら心身の錬成につとめ、健全な母体を築いて、見事御国の期待に応えて下さい。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年10月 

風が吹けば桶屋が儲かる式の論法で、なぜ節約が必要なのかを訴えている。
内容
「頑張れッ! あなたの力で造れる・・・ 弾丸も タンクも 飛行機も
その方法は…… 例え一枚の紙でも無駄にせぬ事、全く不用と思える物でも、もう一度、生かす工夫をする事です。その心構へで生活万事切りつめれば、切りつめただけ、あなたの貯蓄がふえ、あなたの貯蓄がふえただけ、国富が増し、国富が増しただけ、国防力も強化されて、飛行機も軍艦もどしどし製造されるのです。石に噛りついても戦いには勝たねばならぬ。勝たねばならぬ以上、我々はもっと生活を切りつめ、もっと貯蓄をふやさねばならぬ責任があります!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年10月 

人の心を打つ美談が国策遂行に利用された例である。
内容
「ちびた鉛筆 慰問袋に入れたいものは、物よりこころ
或る兵隊さんに渡ったささやかな慰問袋でした。ちびた古鉛筆が二三本と、それに稚い筆跡のたどたどしい添え手紙……ぼくのうちは貧乏で何も買えませんから使いかけですが、僕の鉛筆を送ります。笑わずに使って下さい……兵隊さんも泣きました。戦友も泣きました、みんな、その飾らぬ童心、ひたむきなまごころにうたれたのでした。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年11月 

太平洋戦争前から、防諜と空襲対策は盛んに行われていた。スパイのやり口を、例をあげて国民に注意を呼び掛けている
内容
「スパイの手
最近あった外国での話 三人の少年が水道貯水池に潜む塔に上っていたというたったそれだけの事実からその水道に毒が投げ込まれたという凄い噂が立ち、それが忽ち人口数十万の大都会の隅々まで広がり、不安に戦く全市民が数時間というもの、時ならぬ水飢饉に陥ったという。その噂の蔭にスパイの魔手が踊っていなかったと誰が保証し得よう!乗るなデマの手に!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年11月 

二日続けてスパイ対策を取り上げている。それだけ、深刻な状況であったということなのか。
内容
「スパイの手 外人牧師と園児
某外人宣教師、彼は神に仕える傍ら、幼稚園を経営し、慈悲深い牧師さんとして町内から親しまれていた。所がこの牧師さん、ある時「勇士の遺児にお菓子を送って慰めたい」という神妙なふれ出しで無心の園児に頼んで戦死者遺家族を調べたのである。あれは戦死者数を調べているのだと噂の立つ頃彼の姿は町から消えていた……人情の機微を巧みに利用した恐ろしいスパイの一手!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年11月 

戦没将兵や傷痍軍人およびその家族に対する手当は手厚く行われていたが、改めて確認するような記事である。これはもう、軍事保護院の広告であり、まさに献納広告。
内容
「国を護った傷兵護れ!
軍事保護院の事業
前線で奮闘しておられる皇軍将兵が銃後の事を気に掛けず、専心御奉公できるように国家は厚生省に軍事保護院を設けて、兵隊さんとその家族のお世話をして居られます その事業のあらましは(一)出征の為に暮らしが困難になった家庭があれば、軍事扶助法によって、その生活を助け、お医者にもかけてあげる等(二)戦没勇士の遺児の教育、未亡人や家族方に裁縫手芸等の職業を教える(三)帰還兵士の復職、転職の世話や、商売を始めるならその元手の補助とか又、適業に入る為職業教育を施す等で、大層大がゝりな事業であります。
わたくし達の務め
国家の軍人援護がいかに完備されても、国民全部の熱烈な後盾がなければ立派な効果は上りません。銃後国民が心を協せて「誉の家」の方々をお援けする事は、聖戦下、日本国民のなすべき最も大切な務めです。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年11月 

これも防諜広告である。対米英戦が1ヶ月後に起こるが、それを想定しているかのような内容である。
内容
「スパイの手
アレも無くなる、コレも買っておけ、という声がどこからともなく広がる。買溜が始まる。売惜しみ、闇値が出る。こうして今迄豊富にあった物迄が忽ち姿を消す。物の供給が全く乱れて愚痴や不満が口を洩れ、何となく、社会に不安が漂ってくる。そこだ!敵国の、そしてスパイの狙っているのは…彼等は民心を揺ぶり国力を弱めようとかゝっている。流言に乗るな!これも恐るべき謀略の一手だ!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年11月 

国家統制に喜んで従うことを美徳とする世の中を目指した国策広告である。
内容
「我(が)を捨てよ! 統制にこの心構え
いまや高度の統制時代が来ようとしている。これは我々に多かれ少なかれ、犠牲を要求する。この場合、犠牲を犠牲と感ずるようでは、まだほんとうではない。戦争という大きな目的を達する為には自分一個の「我」など潔く捨てるのは勿論、しかもそれがために義務とか犠牲とかいうような心の負担を感ずることなく自然に湧き上る愛と恭順によって国家の命ずる統制に従う……そういう純粋な境地に達してこそ、はじめて本当といえるのではなかろうか。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年11月 

スマートな機体。いよいよ零式艦上戦闘機の登場。新聞を見ても貯蓄の記事だらけである。
内容
「貯めよう!勝とう!
貯金を老後の楽しみの為とか、家族の生活安定の為とか、不時の用意の為とかいうような個人的の理由からお勧めする時代ではなくなった。戦う日本を勝たせるため。理由はこれだけだ! 勇士の流した尊い血を私共は金輪際無駄には出来ないのだ。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年12月 

とにかく兵器を造るには貯蓄を増やさねばならない、それは国民の責任ときた。誰が始めた戦争だったのか。このイラストは10月の広告の焼き直し、文章も同様、そろそろネタがつきたか。
内容
「あなたの力で出来る!  弾丸も…タンクも…飛行機も…
その方法は……  例え一枚の紙でも無駄にせぬこと、全く不用と思える物でも、もう一度、生かす工夫をすることです。
その心構えで生活万事切りつめれば、あなたの貯蓄がふえ、あなたのふえただけ、国富が増し、国防力も強化されて、飛行機でも軍艦でもどしどし製造されるのです。
石に齧りついても戦いには勝たねばならぬ。勝たねばならない以上、我々はもっと生活をきりつめ、もっと貯蓄をふやさねばならぬ責任があります!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年12月 

12月の広告は、貯蓄を進める、いや強要する広告ばかりである。
内容
「戦い 勝つ為には・・・
あなたが貯蓄をふやす事が何より必要です。これなくては戦時の経済政策が土台から崩れてしまって、戦争に勝つ事ができなくなります。 戦争が長引くと税金も、物価も上り、貯蓄する事が次第に難しくなって来ます。この苦しい中から、更に生活万端を切りつめるのは、仲々容易な事ではありません。併し、戦時の生活と平時の生活とは全く別のものです 国の為、勝利の為なれば、どんな困難にも耐えられましょう! 一円の貯蓄は、それだけ多く、弾丸を敵陣へ叩き込む事です。 一円の無駄使いは戦線を一歩後退させる事です。 私共は、一銭でも、一円でも多く貯蓄して、銃後奉公の誠をつくさねばなりません。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年12月 

家計を握っているのは、今も昔も、奥様ということ。割烹着は当時の奥様の象徴。
内容
「奥様の腕前
着古しの着物も繰廻し方一つで立派に更生する。少ない材料でも工夫すれば栄養豊かなおいしいお料理ができる。
貯金についても、それと同じことが言える。 要は工夫だ。家計の切り廻し方だ。欲しいものは買い放題、余ったら貯金しようではいつまで経っても出来るものではない。そこが奥様の腕前の見せ所だ!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年12月 

イラストの飛行機が大きくなっているが使いまわし、文章もほぼ焼き直し…、という節約広告。因みに飛行機は陸軍の九七式軽爆撃機(キ30)であろう。
内容
「タンク…飛行機も… あなたの力で出来る!
それは……  例え一枚の紙でも無駄にせぬこと、全く不用と思える物でも、もう一度、生かす工夫をすることです。
その心構えで生活万事、切りつめれば切りつめるただけ、あなたの貯蓄がふえ、あなたの貯蓄がふえただけ、国富が増し、国富が増しただけ、国防力も強化されて、飛行機も軍艦もどしどし製造されるのです。
石に齧りついても戦いには勝たねばならぬ。勝たねばならぬ以上、我共はもっと生活をきりつめ、もっと貯蓄をふやさねばならないのです
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年12月 

同じイラストを使いまわしているが、内容は、戦時の心構えを説いている。現代にも通用するし、戦後の高度成長も、国民のこういった心構え、精神があったからこそと思う。
内容
「戦時の生活は
税金は殖える。物価は上る。物は少ない。尚その上に、生活を切り詰めて貯蓄をふやさなければならない。これはなまやさしい話ではない。併し、どんなに辛かろうとも、勝つためには、増税も、消費の規制も、金属回収も、そして貯蓄も、笑って担うべき、当然の負担だ。ただこの場合、我々は、目前の苦しい局面にばかり心奪われて、肝心の”将来の洋々たる発展”を見失っては、何もならない。今日の困苦が、明日の希望のいしずえになることを思うべきである。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年12月 

こどもを利用した貯蓄奨励広告。
内容
「きっとだよッ
もっと貯金をふやそうよ。ぼくたちが貯金を一銭でもふやせば、それだけ日本が強くなるんだよ。飛行機だって、タンクだって、機関銃だって、ぼくたちの貯金がふえれば、それだけ沢山できるんだって。うれしいね。だから貯金をふやそうよ きっとだよ。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和16年12月 

機関車は、D51189号車である。
内容
「何処一つ故障しても 全体が止るのです!
日本という巨大な機関車が、東亜共栄圏という列車を牽引して邁進しています。この機関車が強大な牽引力と快速を発揮する為には、汽缶も、ピストンも、動輪も、歯車も、すべての機構が一個の生きもののようになって働かなければなりませぬ。 若し一個所でも錆びついたり、油が切れたり、空転したり、破損したりしたら、列車全体の運行に支障を来すことはあきらかです。否、ひょっとすると止ってしまうかも知れません。一部に歩調の揃わぬ個所があると、忽ち全体が影響をうける。今はそういう時代なのです。そこに自由主義時代とは全く考え方を変えなければならない。根本的の問題があるのです。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年1月 

今迄は、見出しがあって、その説明が書かれているという構成であったが、ここにきて、見出しのみになった。説明は不要、言うべきことはこれだけ、却って印象が強くなるということか。 
内容
「皇軍への感謝を貯蓄にもりこめ
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年1月 

 
内容
「必勝五訓
一、強くあれ 必勝の信念をもって職場を守れ 二、家庭も戦陣、生活をあげて御奉公の誠をつくせ 三、国土防衛は協力一致隣組の力で持場を固めよ 四、流言にまどうな 当局の指示を信頼して行動せよ 五、国運を賭しての戦いだ 沈着冷静、最後まで頑張れ
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年1月 

 
内容
「弾丸を切らすな!
戦果が偉大であるだけ、銃後のわれ等は、いよいよ心を引緊め、皇国の民であるという自覚を堅持して、一点 悔いなき御奉公を勵げましょう!
貯蓄だ!一円貯蓄すれば、それだけ多くの弾丸を敵陣に叩き込めるのだ!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年1月 

昨年11月以来の防諜広告である。米英を狸はだしと言い切っているのが面白い。例えで「紙がなくなる」とあるが、実際にそんな噂が立ったのであろうか。 
内容
「スパイがあなたの後に・・・・
何しろ 敵は 金と物とに 不自由ない上、悪だくみにかけては狸もはだしの米・英です。表からでは 到底 かなわぬと見れば、裏からつついて来よう! 紙がなくなる等と 根もない噂を言いふらす―これも裏からの攻手だ。スパイはあなたの後にいる!
心を ぐっと ひきしめて、この国運をかけた戦いを闘い抜こう!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年2月 

連戦連勝に驕ることなく、冷静にアメリカの情報を受け入れた論調である。 
内容
「戦場は太平洋の全面に広がった!
ハワイに、マレーに、フィリッピンに ボルネオに、海に陸に、皇軍は、戦えば必ず勝ち、着着、めざましい戦果をあげている。泡食ったルーズベルトは、新年度軍事予算 五百六十億ドル(約二千五百億円)を 議会に提示した。米国民一人あたりの負担額は 一千七百四十円となる。出来るか 出来ないか、ともかく、これで新たに 飛行機十二万五千台 戦車七万五千台、高射砲三万五千台 船舶一千万噸をつくろうというのだ ドル王国も 享楽と虚栄の衣装をかなぐりすてて、今度こそ、裸でかかってくるだろう だが、恐れることはない。けれども油断はならぬ。
諸君! ”一勝に安んずるなかれ” 油断こそ大敵だ!百戦百勝――敵が「参った」というまでは――、勝って兜の緒を締めよ
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年2月 

戦いが長引く事、空襲を受ける事、物資不足、承知の上の戦いである。イラストはまさに敵機による空襲の様子であろうか。しかし、関東地方の本格的な空襲は昭和19年11月からである。
内容
「戦いは始まったばかりだ!
何しろ 敵は 金と物とがあり余るほどある上に、悪だくみにかけては 狸もはだしの米・英です。殊に 米国は いきなり高慢の赤ッ面を ガン となぐられて 仰天し、新年度軍事予算 二千五百億円を組み、その金で 飛行機その他の武器をつくろうと 一生懸命、恥も 外聞もかなぐり捨て 死物狂いの有様です。勢い 戦は長引こう!空襲もあろうし、物の不足も避け得まい。だが、日本人たるの誇りは何物にも代えがたい。敵を倒すためには どんな 苦しみも 笑って 耐えよう! そして 恐れず おごらず敵が「参ったッ」という迄心をひきしめ ひきしめ国運にかけた この戦いを最後まで闘い抜こう!戦は始まったばかりだ!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年2月 

まったく、これは政府広報かと勘違いするような内容である。
内容
「主婦よ!  靴下一足買うのにも知恵を使ってください!
●今までは、買うのに何の苦労もいらなかったのが、このニ月からは、そう簡単にいかなくなりました。靴下一足が二点、しかも一年に四足(乙種は六点)と制限がついた以上、無計画に買うわけにはいきません。ところが、こういう買物にかけては、あなたには、細かい所によく気がつくという、うってつけの長所があります。
●その長所を生かすのです。智慧を働かすのです。特に、三十点、五十点と、大きな点数のお買物などある時は、その年だけでなく、翌年のことまでよく考える位の周到さが欲しいですね。更に家族全体の都合も考えて、予め計画を立てるなど、大いに必要です。
●これからの生活には、万事に、計画を立てるということが、必ずついて回ると覚悟してください。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年2月 

防空演習におけるバケツリレーのイラストである。日頃から演習を行い空襲に備えていたのだが、結果はご存知の通り、甚大な被害を被ったのである。
内容
「腕に覚えをつけよ!
その筋からの指令がないから、やらないでいい、というものではありません。腕に覚えをつけるのならば、いくら上達しても、叱責をいわれる筋はない筈。基本訓練だけは、怠らず実行して、腕を磨いて頂きたいものです。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年2月 

引き続き、防空啓蒙である。読者に防空対策の真剣な取り組みを求めているが、逆にこの頃は連戦連勝のせいで身が入っていないという状況があったのであろう。イラストはバケツに、今は見ることのない「火叩き」である。
内容
「それでいゝのか・・・
実戦だ。そのつもりでもう一度見直すのだ!
火叩き、バケツ、砂袋と ただ門口に並べ立てたりしただけで、いいのだろうか。どこに水槽を据えるか、どこに梯子をおくがいいか実戦だ。そのつもりでもう一度見直すのだ!
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年2月 

特筆すべきは、アメリカが国民にひた隠しにした日本海軍による西海岸空襲によって人心不安が起こったことが記されている。イラストは防空壕に退避する群集の姿である。 
内容
「他人ごとでない!
団体行動の訓練の出来ていない多勢の人が、雑然と集まると、平素は謙譲の美徳を備えた紳士淑女でさえ、あられもなくお行儀が悪くなり、とかく感情にはしったり、無責任、無反省の言動に出たりするものです。最近、アメリカ各地で、しきりに空襲警報騒ぎが起り、深刻な人心不安動揺ぶりをさらけ出しておりますが、ひとかど文明人らしく装う彼等にしてからが、その躾みを忘れた凋落ぶりはいやはや見てはいられませぬ。 これなど確かに、平素から団体行動の修行を積んでいなかった好い例でいざという時、脆くも群集心理にまき込まれ、収拾のつかない混乱に陥る弱点を曝露したものです。団体行動の訓練の決しておろそかに出来ないこと以上の通り。 決して他人事と笑ってばかりはいられませぬ。何時、急迫した事態が突発しても、あわてず、騒がぬ心構えを養うと共に、全体の統制を乱るような行動など、絶対にとらぬだけの団体的訓練を積んでおくことです。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年3月 

写真は、工兵の姿であろうか。兵隊の心構えから銃後の国民の勤労に対する心構えを説いている。 
内容
「兵隊さんとあなた―
仮に、軍隊の場合を考えてごらんなさい。兵隊が、与えられた任務に対して、勝手な選り好みを言ったり、とやかくと軽重をつけたりする者が、一人だっているだろうか。 銃後も、それと全く同じでなければならない。あなたの、現に、受持っている持場は、いはば国家から与えられた重い任務だ。その持場持場に、かりにも軽重をつけ、選り好みをすることは、穏かでない。たとへ、仕事はどんなに軽く下積みであろうとも、心から国を愛し、御奉公に遺算なきを期するならば、持場の不平なぞ、起こりようがないのだ。 こうして、持場持場が固く守られ、更にそれらが、まるで、一つの生物のように結びつくのだということをはっきり、自覚することが出来て、そこではじめて、一人前の働き人ということができるのである。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年3月 

前広告に引き続き、仕事への心構えを説いている。逆にいうと、仕事に取り組む姿勢がまだまだであるということか。 
内容
「日本一の草履取り
その昔、豊太閤が、或る人の問いにこたえて「自分は格別の働きをした覚えはない。ただ、草履取りの時には、日本一の草履取りでありたいと心掛けた 侍時代には日本一の侍たりえんと励んだ。一方の旗頭となっては、日本一の旗頭たるべく努力したに過ぎぬ」といった。たとえ仕事はどんなに軽く、下積みであろうとも、心から仕事を愛し、常に第一等の働きを心がけるという、この態度の、今日ほど必要とされる時はない。ややもすれば、仕事に軽重をつけたがる如き、厳にいましめねばならない。仕事を軽蔑することは、自分を軽蔑することに他ならないのだ。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年3月 

空襲に対する強力な戒めである。しかも、この広告が掲載された4月18日には本当に空襲があった。世に言うドゥーリットル空襲である。県内では横浜、横須賀、川崎がやられた。この攻撃よって多数の人的、物的被害があったが新聞報道では、被害極めて僅少であった。なお、4月は以下の4種類の広告が出されたが、同月内にそれぞれ複数回使用されている。
内容
「空へ構えよ!
敵機はきっと来る、と覚悟せよ! 戦いはながい。しかも、相手が相手。決して敵をみくびってはならない。 油断は本物の爆弾より怖ろしい! ハワイ海戦で米国艦隊が、なぜあんなにやっつけられたかを、考えてごらんなさい。 一にも訓練 二にも訓練 いつ来るかわからぬ敵への、空への構えは、これしかない。家庭も、隣組も、手筈はよいか
赤玉ポートワイン本舗 株式会社 壽屋」
掲載:昭和17年4月 

つまるところ、質素倹約に耐えることも戦いであるという理屈づくりの啓発広告である。
内容
「戦場はあなたの生活の中にある
戦場は、われわれ、ひとりひとりの生活の中にもあるのです。敢て、銃剣はとらずとも、又は、幾千里へだてようとも、お互いに、国民生活をねらう以上、国民の一人一人がもつ生活力と生活力とが、火花をちらして戦っているのです。
しかも、この戦いでは、最後まで頑張り通した者が勝ちなのです。
今こそ、われわれは、物や人手の不自由に堪え、逞しい生活力を、示さなければならない時です。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年4月 

昭和17年4月30日に行われた第21回衆議院議員総選挙は翼賛選挙と呼ばれ、戦争遂行のための選挙として行われ、結果、東条内閣の独占体制が確立したと言われている。この広告も直接的な言及はないが国策遂行に向けた内容である。
内容
「一億の奉答
自分の選挙権だ、使おうと使うまいと自分の勝手だ、ではすまされませぬ。
畏くも、御下問に対する「一億の奉答」です。
いやしくも、怠るが如きことがあってはなりませぬ。不正、不純があってはなりませぬ。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年4月 

昭和17年3月と同内容の広告である。イラストだけが違っている。前月は防空壕に避難する人々であったが、今回はサイレンである。
内容
「他人(ひと)ごとでない!
団体行動の訓練の出来ていない多勢の人が、雑然と集まると、平素は謙譲の美徳を備えた紳士淑女でさえ、あられもなくお行儀が悪くなり、とかく感情にはしったり、無責任、無反省の言動に出たりするものです。最近、アメリカ各地で、しきりに空襲警報騒ぎが起り、深刻な人心不安動揺ぶりをさらけ出しておりますが、ひとかど文明人らしく装う彼等にしてからが、その躾みを忘れた凋落ぶりはいやはや見てはいられませぬ。 これなど確かに、平素から団体行動の修行を積んでいなかった好い例でいざという時、脆くも群集心理にまき込まれ、収拾のつかない混乱に陥る弱点を曝露したものです。団体行動の訓練の決しておろそかに出来ないこと以上の通り。 決して他人事と笑ってばかりはいられませぬ。何時、急迫した事態が突発しても、あわてず、騒がぬ心構えを養うと共に、全体の統制を乱るような行動など、絶対にとらぬだけの団体的訓練を積んでおくことです。
赤玉ポートワイン本舗株式会社壽屋」
掲載:昭和17年4月 

イラストはシンプルに内容をそのまま表しているのみである。 いずれも夏の習慣であるが、窓の開放は暑さ対策と思うのだが、秋まで続ける意味とは何か?
内容
「ラジオ体操にせよ
 冷水摩擦にせよ
 窓の開放にせよ
この夏、折角やりはじめたからには、ぜひつづけたいもの。又ずっと続けてこそ、ききめもあり、値うちもある ただ、つづけることがいいのだとは知りながら、それを実行するのが容易でない。要は、あなたの意志の強さにかかっている。 そして今こそ、その意志が、どのくらい強いか、ためされる秋!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年10月 

勝利に奢ることなく、油断なく、気を引きしめよ、との論調が多いのは、さすが日本と感じるところ。17年4月には日本初空襲(ドゥ―リットル空襲)を経験している。
内容
「これからだ
 訓練の成果示すのは
隣組のみなさん、しっかり心をひきしめて、油断なく、真防空に挺身する覚悟を新たにして下さい。戦いもこれからなら、従って訓練の成果を実戦に示すのもこれからなのです。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年10月 

今では日本の職人気質として世界から賞賛される話であるが、ドイツのエピソードとして語られているのを見ると、当時の日本はこういう考え方が少なかったのであろうか。
内容
「鋲つくり二十年
ドイツの或る工場で、小さな鋲ばかり、二十年間も、つくりつづける一老職工がいる。人は、こうした種類の人間を、とかく甲斐性がないと軽べつし、本人も又ひけ目を感じ易いものだ。所が、この老職工、いつかうにひけ目を感じないばかりか、むしろ永い間同じ仕事をしつづけることに、大いなる誇りをもっていて、常々口ぐせに”自分のつくる鋲が、必要とされる間は、二十年はおろか三十年が五十年でも、この仕事をつづけるつもりだ。立身出世なぞ、問題ぢゃないよ”といって、いまもなお相も変らず、小さな鋲つくりに余念もない、という。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年10月 

写真が不鮮明でよくわからないのですが…。これはやられました!現代にも通じるこのセンス。素敵です。広告大賞を差し上げたい。
内容
「手紙の入っていない慰問袋は、気のぬけたビールみたいなものだ!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年10月 

ミッドーウエー海戦の敗戦から敵が攻勢に転じていることは国民には知らせていないはずだが、「敵の抗戦準備も漸く盛り上がり云々」の表現は意外である。
内容
「弛む心のネジを巻け
相当長い間、全力をあげて一事に熱中すると、倦怠期という至極厄介な一時期にぶつかることが、ままある。 事情が寸刻の弛みも許さない上に、特に敵の抗戦準備も漸く盛り上りかけて来ている折柄、増産に、防空にその他あらゆる銃後生活に倦怠の危機なぞあらしめてはならぬ
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年11月 

食卓に向うお父さん。ご飯をかき込んでいるような後姿である。一粒のお米も無駄にしないとは現代にも通じる格言であるが、それが、神恩、皇恩とあるのは、皇民教育の時代を示している。
内容
「一粒の米にも
広大な神恩 皇恩の有難さ噛みしめて、心からなる感謝の誠をささげましょう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年11月 

「自分さえよければ」の考えは米英流と断言していることで、一石二鳥の効果を得ている。ただ、両手のイラストは何を表しているのか?
内容
「この際も一度 反省しよう
あの感激の日からもう一年になろうとする。永い間知らず知らずのうちに心の中に巣食って来た、自分さえよければ、といった米英流の考え方が、未だに、お互いの生活にこびりついてはいないだろうか
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年11月 

マラソンのイラストは、あきらめず頑張るとの心頃構えをストレートに伝えるものだが、これは…ユーモラスである。
内容
「忍苦と頑張りの戦い
戦いは………太平洋を挟んで忍苦と頑張り合いの段階にはいった。勝つためには理窟はいらない。どこまでも頑張り通すだけだ。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年11月 

戦局が傾きかけてきたことが察せられる広告である。しかし、使命果して沈むとは悲しい状況でいかにも日本的である。
内容
「艦造れ!
使命果して従容沈みゆく艦の、最後を見届ける瞬間の乗組将兵の気持を察するとき、誰がヂッとしていられようか。艦だ!戦費だ!貯金だ!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年12月 

化粧品業界は質素な旨を主張しながらも最低限の化粧で利益を出すべく奮闘しているところ、身なりはいらないと断言しているのが気持ち良い。イラストも代表的な農家のおかみさん。
内容
「身なりより身体つくれ
働くためには身なりはいらない。丈夫で、元気で、朗らかな、身体が、何より物をいう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年12月 

全体主義の例えが巧みである。昭和16年8月の広告でも「君も鎖の一環だ」と全体主義に徹することを要求していた。
内容
「撚りを戻すな
一億の心の糸が、大詔のもと翕然(きゅうぜん)と撚り合わされて、美事逞しい唯一筋の綱になった。この綱の生命は、一億一心という撚りにある。一人でも不平不満を洩らしたり、自分さえよければの行動をとれば、それだけ撚りが戻るのだ。撚りが戻れば綱全体が弱くなる。撚りを戻すな、ゆるめるな!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年12月 

開戦1年でこの表現。叱咤激励では如何ともし難い我が国と米国の国力の差をどれだけの人が知っていたのであろうか。
内容
「働こう!
沈めても、沈めても、後から後からと繰出して来る敵の執拗さ。ソロモン海域こそは、まさに、大東亜戦争が、消耗の戦い、生産の戦いであることを、日本の戦艦、飛行機の貴い犠牲に於て、痛切に□へてくれた。果然戦いの本当の姿は、銃後の生産陣営にあったのだ。働こう。働き抜こう。敵の生産力に、是が非でも打ち勝つために!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和17年12月 

親は政府で、子が国民。挙国一致体制の極致である。
内容
「親なればこそ 子なればこそ
外、大敵を向うに回して一歩も退かず、内、莫大な戦費をまかない、食糧、資材を調えて貧乏揺るぎもさせぬ、げに、親なればこその労苦。政府当局のこの親心を思う時、子としてどうすればいいか、言うまでもあるまい
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年1月 

落下する無数の爆弾に燃やせ、燃やせの文字、今の感覚では、空襲で焼かれる日本の姿として見えてしまうが、時は昭和18年初頭、都市空襲の前なので、もちろん意図するところは違う。敵愾心を燃やせということで、この爆弾は敵を爆撃することを表しているのだ。
内容
「敵愾心
敵も必死だ  燃やせ 燃やせ もっと燃やせ
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年1月 

緒戦の連戦連勝のたびに旗行列で勝利に酔っていた国民も、いよいよ褌を締め直す時期がやってきたようだ。あらんかぎりの貯金と労働は戦地と同じ戦いとのこと。体育会系精神論が跋扈するようになってきた。実は、昭和17年10月の広告でも「これからだ」は使われている。この時は、訓練の成果を示すのはこれからという趣旨であり、一段階進んだのである。
内容
「これからだッ
我らの目標は「必ず勝つ」これだけだ。我らは必ず勝つ爲に根かぎり働き、必ず勝つ爲に精一ぱい貯金するのだ。働くこと、貯金することが既に戦いなのだ。勝利の喜びは死ぬ程つらい目をしてこそ生きてくる。サア 二年目も勝ち抜こう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年1月 

このコピー、昭和17年に選ばれた国策標語の一つで、物資が足らない社会を、工夫で凌がせようとするもの。今の世では、能無しリーダーの失策を部下に何とかせい!と押し付けるという意味になる。ただ、本文中、自分が苦しいときは相手も苦しいというのは、競技の世界では今でも通用している。
内容
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ
戦争に無理や困難の伴うことは言うまでもない。まして”莫大な消耗を伴う長期戦”という、対米英戦のもつ性格のきびしさから推して……
だが、私たちが苦しみと戦う時、敵もまた苦しみと戦っていることを忘れてはならない。しかも『異るところは敵が絶望の淵に喘ぐ苦しみを味いつつあるのに対して、われは前途に光明をもつ”生みの苦しみ”を経験していること』を、ゆめ、忘れてはならない。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年1月 

サラリと捨てての表現が憎い!国民皆勤労をハンマーを握る片手に象徴させている。旧ソ連国旗でも労働、工業のシンボルはハンマーである。
内容
「国に捧ぐこの力
男も女も 老人子供も 徴用者も 常用者も すべての人が小さな「我」をサラリと捨て 心あわせて精一杯 根かぎり働く時!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年2月 

広告と言うより、生活実用記事である。
内容
「くらし方の工夫  生鮮蔬菜類の上手な貯え方
一、傷みのない、完全なものを選ぶ。  一、風通しよく、乾いた処にひろげておく。  一、吊しておく。玉ねぎなどは括って軒下などに吊す。  一、乾いた砂、鋸屑、もみがらの中に埋める。馬鈴薯、果物などは、こうするとよく保つ。  一、乾いた穴蔵の床下などの中に入れる。変化が少ないから根菜、菜葉も、幾分保ちがよくなる。  一、冷蔵庫を利用するのもよい。この場合、中の温度は十度位にする。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年2月 

滅私奉公。すべてを戦争遂行のために捧げようと訴える、この広告は一体何。
内容
「私欲追放
一切の、個人的なものの考え方、見方を捨てたら、世の中が、どんなに美しくなることか。
一切の、自分本位な不平、不満の声が消え去ったら、世の中が、どんなに明るくなることか。
すべてをあげて、国のために捧げたら、日本が、どんなに逞しくなることか。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年2月 

「もったいない」は日本の美徳として世界に知られるようになったが、「間に合せ」も同じように、無駄遣いせず、節約することを意味する。いずれも現代に通じる言葉である。
内容
「お上が、「間に合せ」を強調し、要望する趣旨は、一時しのぎを指すのではないと思う 
あくまでも、戦争が続く間は、耐え忍ぶという、持続性のある「間に合せ」を期待しているのだと思う 
皆で、その期待に応えよう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年2月 

突き出した切っ先。刺激的なイラストである。「撃ちてし止まむ」はこの頃盛んに使われたスローガンで、敵を打たずにはおくものかという意味。もともと、古事記の神武天皇東征の際の記述からとられたもの。これをこのイラストで表現している。
内容
「撃ちてし 止まむ!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年3月 

230億とは、昭和17年度の貯蓄目標額である。イラストは明治初期に生まれた宝珠貯金玉。宝珠の形をした焼き物の貯金箱です。貯蓄を強要する広告は過去何回も出されているが、今回は更に力強い内容となっている。
内容
「もう一と押し 230億
決勝点は目の前だ。ここで気をゆるめてはいけない。工夫で 努力で 忍耐で 頑張りで きっとやり抜こう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年3月 

前回に続き、貯蓄目標額達成を目指せとの献納啓発広告である。この数日で目標額が40億円もアップしているが、逆にいうと、それだけ厳しい状況に陥っているということであろう。
内容
「貯蓄を怠れば戦力鈍る!
貯蓄の新目標二百七十億円へ、足並み揃えて総進撃!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年3月 

職場=戦場というのは常套句である。イラストを見るとどうも女性の仕事のようであり、つまり婦人向きの啓発なのであろう。気になるのは「メリ犬共」と言う表現。「メリケン」とはアメリカの別称であるが、「ケン」を「犬」に変えることで、「アメ公」と同じような蔑称とし、負けるわけはない意識を高めようという作戦であろう。
内容
「戦闘配置につけ
あなたの職場が、そのまま戦場なのだ。そしてあなたはそのまま戦闘員なのだ。あなたの敵は、あなたと同じ仕事に携るメリ犬共だ。そいつらも、自国内にあって、必死と頑張っているに違いない。負けてなろうか
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年3月 

空襲時の心構えについて説いている。交錯するサーチライトの光線で空襲を表現している。日本では夜間の空襲はまだ受けておらず、ヨーロッパ戦線を参考にしたのであろう。空襲対策(民防空)は、早い時期から徹底的に行われていた。当局の指示は、避難より残って火を消せであり、その結果多くの尊い人命を失うこととなった。
内容
「スワッというとき
悔しいのは銃弾の実害より、人心の動揺だ。落着いて当局の指示に従うのが何より賢明!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年3月 

大本営発表では敵を撃破・撃沈の文字が並んでいるが、防空訓練は日夜行われており、内実は負け戦に転じており、連合軍の空襲がいつかはあると考えていた証左であろう。イラストも日本を囲むように敵機編隊が襲ってくるというもので、国民のより一層の心構えを説いている。
内容
「ねらわれている
ルーズベルト一流の強がりと軽視するな
“日本々土上空で、重大行動をとるゾWと暴言を吐きはしたものの、何ができる、とたかをくくるのが大怪我のもと!怖れることはないが、待つあるを待むの、十分な用意だけは、あって欲しい。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年4月 

シンプルな内容で、原点に帰ったような広告。
内容
「誰にでもできる 戦力増強
動力も資材もそれを働かす人手があってはじめて戦力になる その肝腎な人手も健康者であってはじめて役に立つ だから戦力増強の根本はそれに携る各自の健康にある 鍛えよう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年4月 

空地有閑地は全て菜園に変身された。
内容
「生み出す生活
消費する一方だったこれまでのくらし方を改めて、生み出す生活を工夫しよう。年寄りは年寄りで主婦は主婦で子は子で 一家をあげて生み出そう。それぞれの分に応じて、戦争に必要な何かを生み出そう。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年4月 

国家的には、あらゆる物資の不足、特に食糧不足は深刻となってきており、農作物の増産は火急の案件であった。献納広告である赤玉の広告で農家への呼びかけは初めてである。
内容
「増産! 田も畑も農家の戦場
△麦の病害予防に手落ちはないか △麦のあとには甘藷を植付けよう △甘藷は千貫どりを目標にしよう
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年5月 

前回に引き続いて農家への訴えです。増産です。かなり強い書きぶりです。それだけひっ迫しているということです。
内容
「農家よ この親ごころ 無にするな
お米の値段が改正になった その心がどこにあるか、今更言わないでもわかっています。値上げを喜ぶのは私ごとです。喜ぶより前に、まづ農林当局の気持ちを察し国のことを考えなければ相済みますまい。 増産です。これが、当局の親ごころへの、ただ一つの答えです。明日とも言わず、たった今から、やってください。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年5月 

「米英必殺」という言葉が三度も出て来る。相変わらず激しい主張である。ということは、国内はまだまだ生ぬるいということであろう。イラストがあるようだが、残念ながら薄くてわからない。
内容
「今度という今度こそ
いままで、日本国民としての心構えに対する言葉は随分あったが、時の経つにつれて現実と距りのあるものになってしまう傾きがなかったか。「米英必殺」は単なる売言葉に対する買言葉乃至希望ではない。「必勝」が、只管、聖慮を安んじ奉らんとする一億不動の信念であるなら、「米英必殺」は一億尽忠の行動に他ならない。山本元帥の戦死こそ何よりも雄弁にそれを物語るではないか。今度という今度こそ「米英必殺」を単なる言葉に終らしめるな
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年6月 

馬鹿正直の意味は、当局の指示に何も考えずに従えということ。ここまで言い切る広告とは、寿屋とは一体なに!
内容
「なりきれ!
なまじいの批判や議論が何の役に立つ。みんなが、何も彼も忘れ、小さな「我」を捨て、思い切って、馬鹿正直な人間に成り切ろう。これこそ戦いに勝つために、祖国が、一番求めているものなのだ!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年6月 

3月時点の目標額は230億円。4月からは40億円も増えている。増える一方の貯蓄目標について、生活を捨てて貯蓄せよとは、これが、滅私奉公が求められた時代なのだ。 
内容
「主婦よ 貯蓄の余りで暮らしを賄え!
貯蓄は収入から生活費を引いた残りでするものだという考えを捨てなければなりませぬ。自由貯蓄の時代ならいざしらず。いやしくも今日の貯蓄は、戦費という大役を受け持っています。大砲や飛行機をつくる費用の大部分があなたの貯蓄に俟たねばなりませぬ。 私たちは、自分のことなど後回しにして、なにを措いても、まづ貯蓄にしなければなりませぬ。今年の目標額二百七十億を、私達の手で調達しなければなりませぬ。そして残ったお金でめいゝの暮しを工夫し、賄わねばなりませぬ。そこに総力戦の真面目があるのです。やり抜きましょう!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年6月 

労働者や主婦など銃後で頑張っている人々へ語り掛けるという形の広告は赤玉ポートワインの専売特許。今回は工員に向けた感謝の言葉を述べている。そして、幟旗には増産の文字。 
内容
「工員諸君!
ありがとう ほんとうに御苦労様です 大切な腕です 身体です 怪我 誤ちのないように 心からいのるばかりです!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年7月 

前回の広告から続いている。前回は頑張っている工員諸君に感謝する内容であったが、今回は感謝された工員たち自身が、身を投げうって御奉公するという意欲を示すという内容。「非常増産」という言葉がキーワードでともに使われている。
内容
「捨身奉公
非常増産 引受けた よしきた やるぞ 頑張るぞ
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年7月 

慰問品について、お手製が一番という趣旨であるが、これは全世界普遍的な考えであり、この時期に訴えるのは、何かの戒めとしてなのか?慰問品競争のようなことが起きているのかな、と考えさせられる内容ではある。イラストは慰問袋であるが、真ん中の丸いものは何であろうか?
内容
「お手製
とぼしくとも、まづくとも、血の通った、心のこもったお手製の慰問品だけが兵隊さんをこころから喜ばせ、ほんとうに慰めることができるのだ
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年7月 

日常の些細なことを取り上げて、国策に結び付けていく。毎月3回〜4回広告を出しているので、ライターさんは大変だ。 
内容
「よく噛めば 一石二鳥の得
極端なはなしが、水でさえ噛んでのめという。御飯をよく噛んで、口の中にある間にできるだけ細かにしてやれば、暑くて、はたらきの鈍った胃腸も大助かり、楽にこなれ、タップリ栄養がとれ、しかも少しの量でお腹が一杯、節米にもなる それこそ、お金で買えない一石二鳥の得になる………
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年8月 

うんうんと思わず頷いてしまう今に通じるお金にまつわるエピソードである。こんなところから貯蓄報国にむすびつけるところは、さすが赤玉の広告といったところ。
内容
「十円のお札
十円のお金が十円札である間は、なかなか無くならぬのに、一度細かにくずしたが最後、またたくうちに出ていってしまう。どうやらこんなところにも、貯蓄の鍵がありそうにおもう……
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年8月 

シンプルだけどとっても厳しい、まさに滅私奉公、こんなふうに国民に刷り込まれていくのだろう。イラストは戦時中の工場作業の代表、万力で挟んだ部品に鑢をかけるの図。
内容
「勤労魂
自分のためではない 賃金のためでもない お国のために働くのだ
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年8月 

現在でもいわれる”one for all”一人はみんなのため、いや、全てはお国のためと言った方がピンとくる。戦争時の国家総動員とはそういうことで、これが戦争の実相である。
内容
「みんなのため!
お互いにその気になれば何も彼もうまくいく
それなのに とかく”バカバカしい”がさきに立つ。このケチな根性から、まづ捨てゝしまはねばならぬ!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年9月 

前回からの継続テーマ。私情が絡んだ不公平な売買が行われている現実を批判しているが、それだけ蔓延っていたことが伺える。しかし、そうでもしなければ生活できなかったという実情もあろう。何時の世でも同じである。
内容
「みんなのため!
自身の行いが皆にどうひびくかまづ反省せよ
お買物 情実で売り 情実で買う。そのためにみんながどれだけ迷惑しなければならないかをおもへ!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年9月 

みんなのため3回目。デザインも統一して続けているが今までにないことである。それだけ訴えたいテーマということなのであろう。
内容
「みんなのため!
折角の美徳も償いを期待したら、不純になる
隣組では… 進んで縁の下の力持ちをつとめたら、みんなもきっと自分のためにつくしてくれるのだ!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年9月 

「スポーツ」「ダンス」「映画」は、今にも通じるアメリカ人のイメージである。しかし、アメリカの百姓に負けまいと俵を目いっぱい担ぐ百姓のイラストからはとても勝てるイメージが湧かない。
内容
「頑張れ 農家よ! アメリカの百姓に負けるな
敵の銃後も真剣だ。必死だ。スポーツとダンスと映画と放埓に日を消していた曽てのヤンキーどもの面影など、みぢんも見られないという。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年10月 

前回に続く負けるなシリーズ第二弾。工員編である。イラストと「農家」「百姓」の部分を「工員」に変えただけという意図的なのか、手抜きなのか?
内容
「頑張れ 工員よ! アメリカの工員に負けるな
敵の銃後も真剣だ。必死だ。スポーツとダンスと映画と放埓に日を消していた曽てのヤンキーどもの面影など、みぢんも見られないという。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年10月 

負けるなシリーズ第三弾。母親編である。負けるなシリーズの前はみんなのためシリーズで3回完結であった。今回も同様。
内容
「頑張れ 母よ! アメリカの母に負けるな
敵の銃後も真剣だ。必死だ。スポーツとダンスと映画と放埓に日を消していた曽てのヤンキーどもの面影など、みぢんも見られないという。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年10月 

クエッションマークに文字が被り読みにくくなっている。手抜きと思う程見栄えはないが、内容は現代でも通用する変革のマインドを論じていて、参考になる。
内容
「これで 勝てるか
惰性が残っている  一切の行きがかりを棄てよう。一切の惰性を解き放とう。一切の、いままでの考え方、行き方をご破算にしよう。我々は戦っているのだということを、身に染みて考えなおそう。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年11月 

12月のテーマは、「こんな考えは早く改めたい」であり、戦争遂行に向けて生活の見直しを要請するものになっている。12月は全3回中、2回この広告を掲載している。
内容
「こんな考えは早く改めたい
くらし方 
今更のように、お米が足りないといってあわてている人の話をきいてみると、これまでの暮し方に工夫や、努力や、用意の欠けていたと思われる節が沢山ある。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年12月 

前回に続いてお米を止めようという趣旨。つまり、お米(白米)の不足が大きな問題になっているということ。日本人はやっぱり白米(銀シャリ)志向がとても強いということです。
内容
「こんな考えは早く改めたい
ご飯におかず 
お米だけが主食物で、あとはおかず、なぞと思うのは近頃のん気すぎます。大根でも菜っ葉でも、みんなりっぱな主食物に他なりませぬ。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和18年12月 

昭和19年の始まりは「生活も戦いだ」シリーズで幕開け。月ごとにシリーズ化する試みは、読者への印象付けが強まることと、制作者側もデザインをそのたび考えることがいらないという一石二鳥の効果がある。内容は、配給だけでは間に合わない実情を無視した精神論の押し付けであり、敗戦の大きな理由の一つ。誰だって腹が減っては戦はできぬのである。
内容
「生活も戦いだ!
配給だけで間に合わせよう  工夫だ 努力だ 忍耐だ それがたたかいに他ならぬ
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和19年1月 

「生活も戦いだ」シリーズ第2弾。貯蓄報国である。質素倹約が叫ばれ続けているが、目的は国に差し出せという事。しかし、無駄を省くことは今に通じる大事なことではある。イラストには、貯金帳やソロバンが描かれ、お母さんが、机に向って、どこかに無駄は無いか? と一生懸命チェックしているのであろう。
内容
「生活も戦いだ!
ムダを省いて貯蓄しよう  当たりまえのことをしていては勝てないのです!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和19年1月 

「生活も戦いだ」シリーズ第3弾。空閑地を畑にすることは、当局からも重点対策として打ち出されているが、前回の「無駄を省く」同様、使えるものは根こそぎ動員という社会情勢を表している。しかし、たった三坪の畑とあるが、現在では三坪もあれば贅沢となろう。イラストは、三坪の畑を耕すお母さんと、遠くには、収穫したのであろうか、大根?を掲げる子供の図である。
このシリーズ、いずれも登場するのはおかさんだ。男は戦場や工場に出払ってしまい、日常生活の主体は女性であり、その女性に戦いを強いるという社会状況なのだ。
寿屋は、1月に4回広告を出しているが、そのうち、この第3弾を2回掲載している。
内容
「生活も戦いだ!
皆で生み出す工夫しよう  庭先のたった三坪の畑も増産の重要基地です 
赤玉ポートワイン本舗 株式会社壽屋」
掲載:昭和19年1月 

さすが、赤玉の啓蒙広告。いいものを早く、大量に、が理想であるが、掛け声だけで、実際は質の低下は免れなかった。この広告、この月に3回掲載している。
内容
「量も大切だが 質も落とすな!
拙速なぞ平時の常識は忘れてしまいたいもの 
赤玉ポートワイン本舗 株式会社 壽屋」
掲載:昭和19年2月 

前回と同しデザインの広告。昨年の9月から月内は同じデザインを使う手法を続けている。「藉すな」とは、今は見慣れない文字であるが、「貸すな」の意味。時計のイラストは60分計である。この広告、この月に2回掲載している。
内容
「時を稼げ! 分秒も惜しめ!
「日本に時を藉すな」と。敵の弱点を衝け! 
赤玉ポートワイン本舗 株式会社 壽屋」
掲載:昭和19年2月 

ここへきて、ストレートに敵をやっつけろとのアピール。今迄は心構えを説く啓蒙的内容が多かったが、回りくどいことは抜きにして、敵撃滅とは。戦局はいよいよここまで来たかということ。しかし、よしッ!という表現には、まだ、余裕を感じてしまう。
内容
「よしッ!やッつけろ
「増産も 貯蓄も 疎開も 節電も 目指すは、ただ 敵撃滅の一路
赤玉ポートワイン本舗 株式会社 壽屋」
掲載:昭和19年3月 

今回の砲弾は、敵弾である。敵をやっつけろから、敵弾が飛んでくるとの変化に国民の多くは負け戦を感じ始めていたのではないだろうか。
内容
「今や 敵前
「距離感を修正せよ。目に、敵の砲口を見、耳に、弾道のうなりを聞け!
赤玉ポートワイン本舗 株式会社 壽屋」
掲載:昭和19年3月 

前回広告の、すわっ敵の攻撃だ!から一転、一呼吸おこうとは、いよいよ本番という雰囲気が漂ってくる。
内容
「胸を張り 肝に力をこめ 肩をぐっとおとせ
「おちつきが出る。肝が据わる。判断が確かになる。強く逞しい積極的な精神が湧き上る。
赤玉ポートワイン本舗 株式会社 壽屋」
掲載:昭和19年3月 

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