医薬品の広告

広 告

医薬品の広告、訴求すべきは、勿論、薬の効能である。そして、非常時こそ、薬が必要とされ、販売促進の絶好機である。自社製品の効能を、如何に販売に結び付けるか、各社こぞって、知恵を絞っている。 分り易いのは、健康維持、体力増強である。銃後を護り、生産力を上げるには健康はもとより、頑強な身体が求められる。 現代の常識からは首をかしげたくなるような、また誇大な広告もあるが、人々のニーズに合致したのであろう。 慰問好適品としての訴求も多い。 また、戦争遂行に協力する国策広告になっているものも数多く見られる。

どりこのの広告
昭和5年に今の講談社から発売された滋養強壮飲料で、戦前はポピュラーなものであったそうである。 何にでも効果があるような、現在では誇大広告となるような驚きの内容であり、戦車と歩兵による迫力溢れる突貫攻撃のイラストを使って表現している。
*「どりこの」については ウイキペディアを参照のこと
内容
「高速度滋養料 どりこの  突貫!激務も、病魔も 忽ち征服「どりこの」一杯 意気軒昂! 朝夕の一杯…… 忽ち血となり肉となる 
美味滋養 気分爽快 疲労回復 食欲増進 元気旺盛 能率増進  大評判!!愛飲者日々潮の如く大激増!!
効果絶大! 左の如き方々はゼヒ「どりこの」を召し上り下さい  ▲胃腸の弱い人 消化を要せず直ぐ栄養となるから胃腸病者に好適 ▲結核症の人 結核患者に絶対必要な精力をメキメキ増進する! ▲産前産後の人 胎児の発育をよくし母体の衰弱を防ぐ…… ▲老衰病の人 栄養が十分摂て、諸機能の活動旺盛となり若返る ▲腺病質の人 漸次精力を増進し、血色もよくなり壮健になる ▲母乳少なき小児 乳離れの小児や母乳不足の幼児に絶好無二の栄養 ▲食欲不進の人 胃腸の御世話にならず十分栄養がとれ、食欲増進 ▲神経衰弱の人 朝夕飲用すれば気分爽快知らぬ間に衰弱がなおる ▲病後衰弱の人 直ちに吸収されて体力を増し元気旺盛となる ▲其他食べ過ぎ、胸つかえ、事務繁忙、旅行等……には是非「どりこの」をお用い下さい!
「どりこの」は五倍乃至七倍の熱湯又は冷水に薄めてお用い下さい ◆お茶の代わりに……食後の一杯! ◆葡萄酒、ウイスキーに入れると非常に美味 ◆白湯で薄めてコーヒーの代用に ◆パンにつけてジャムの代りに等千種□□  定価一瓶一円二十銭」
掲載:昭和7年3月 

ノーシンの広告
現在でも著名な頭痛薬「ノーシン」であるが、当時は頭痛というより、頭の疲れ全般に効くとされていたようである。勉強の疲れにノーシンとはびっくりさせられる。 また、何故か双発の軍用機と思われる飛行機の写真が使われているが、科学技術の力をもって効能の力を伝えようとしているのであろう。

内容
「頭脳疲労回復薬 ノーシン
頭脳はエンジンだ手入が絶対必要だ 熱した頭、疲れた脳、変調…朦朧…憂鬱…能率低下…疲れた頭を抱えて能率の減退を悲観するのは愚だ!即刻ノーシンを用いて絶えず頭脳を明快にせよ
‐安全第一‐ノーシンの効果は単に頭痛を解消するに優れた作用を発揮するばかりでなく、執務、勉強 映画、裁縫、夜勤等の頭脳疲労を速やかに回復し、朦朧とした頭をハッキリさせ、記憶力思考力を旺盛にする作用を持って居ります。胃腸其の他に悪影響の無い事は、多年実験ずみのものです。
主効‐頭脳過労あたまのつかれ・頭内朦朧あたまのぼんやり頭痛・偏頭痛・頭重あたまおも 眩・暈・精神憂鬱きぶんゆううつ
価格‐四回分…二十銭 七回分…三十銭 十三回分…五十銭 二十八回分…一円  ★どこの薬店にもあり」
掲載:昭和10年11月 

メンソレータムの広告
現在も人気の家庭常備薬であるメンソレータム。アメリカのメンソレータム社が開発した塗薬で、大正9年から近江兄弟社が販売していた。現在は、様々な変遷を経てロート製薬が販売している。 コピーの「お肌の非常時」、「防衛陣を布く」の表現は、当時の世相をそのまま利用したもので、イラストも、子供兵士が突撃しているという生々しい広告である。

内容
「世界の家庭薬 メンソレータム
厳冬!ひび しもやけ 肌アレに 襲われる お肌の非常時です! メンソレータムで完全な防衛陣を布きましょう」
冬の特効 肌あれ ひび  あかぎれ 外傷 火傷 鼻かぜ 頭痛 歯痛 神経痛 痔疾 お化粧下 髭そり後」 「個 二十五銭 四十五銭 九十銭 一圓八十銭」
掲載:昭和12年1月 

サロメチールの広告
戦地で蚤や南京虫に悩まされるのは当たり前のことであったようで、そういった虫刺されに効くサロメチールは慰問の好適品であっただろう。 生々しい手紙の文面は、消費者の購買意欲を大いに刺激したのではないだろうか。掲載された頃は、破竹の勢いで攻めていたが、満州国の国境線である万里の長城に日の丸が翻っているイラストが使われている。

内容
「サロメチール 慰問袋にそへて
奮戦突撃でさぞお疲れのこととでしょう、殊に蚊や南京虫で、お困りのよし伺いましたから本日慰問袋にサロメチールを若干添えて置きました。このクスリは打身、挫きの痛みを治し、行軍の疲れを取り去り、毒虫の痒みや腫れを止めたりして大変役立ちます 御元気で御国のために功名をお挙げ下さるようお祈り申上げます。
百萬の敵にも一向怖れない兵隊さんが爆撃よりも手榴弾よりも嫌なのは支那名物の南京虫だそうです。この虫は昼となく夜となく内地からの兵隊さんを侵して、身体中を腫れ上らしめ、不眠症、神経耗弱にさせます 南京虫の刺し傷にサロメチールを擦り込むと痒みも腫れもいつしか消え去って快い安眠が出来ることは既に試験済です。 一円五十銭 二円 慰問袋用には一打入‐(一円八十銭)もあり」
掲載:昭和12年10月 

妙布の広告
詳しいことはわからないが、今のサロンパスのようなものか。 銃後には健康という観点からの広告。イラストは文章に合わせて、体に貼っている所、爆撃の様子、これは激烈な皇軍を表しているのであろう。そして、慰問袋に入れる所、を描き、目で見てわかるような工夫がされている。 また、冒頭、「祈武運長久、国力伸長」が添えられているのは、将にご時世である。

内容
「(祈武運長久・国力伸長) 銃後の活動の為 健康の障害排除に 驚く妙布の効力!!
寒冷時は健康の非常時です そこで簡便適切の御手当てを 神経痛やリウマチス等が刺す様に身を悩ます時期です。其他新陳代謝機能の低下から血液の循環は鈍くなり疲労や肩腰のコリが激しくなります。そこで此等障害を除く法として最も定評ある効力を発揮する妙布を患部にお貼り下さい。強力な薬効は表皮からグングン皮下根因に浸透し各種の治療作用を迅速に発揮するので、体力費消の激烈な皇軍将兵の健康保護薬としても慰問袋には最適薬として非常に好評を戴いてます。
妙布 外用  主効 肩腰のコリ・打撲傷 筋肉の痛み・歯の痛 リウマチス・乳のコリ 神経痛・靴傷過労痛 胃の痛・胸咽頭の痛
金二十銭 金三十銭 金五十銭 金一円 全国各薬店にあり 本舗 株式会社 渡邊輝綱薬房 東京市麻布区霞町二十一番地(振替 東京四六〇七番)」  
掲載:昭和13年1月 

妙布の広告
筋肉や打撲の痛みに効く妙布は、不眠不休で活躍する将兵の慰問品に最適であることを訴えている。

内容
「除け!健康の敵 肩腰のコリ・筋肉の痛み リウマチス・神経痛・胃痛 過労の痛み・乳のコリ 打撲傷・靴傷・胸咽喉の痛〜
慰問袋に 酷熱と泥濘の中を不眠不休活躍する将兵の健康保護に効力秀抜用法至便の妙布は最適薬です
二十銭 三十銭 五十銭 一円 全国薬店にあり  東京市麻布区霞町二十一番地 振替 東京四六〇七番 本舗 株式会社 渡邊輝綱薬房」
掲載:昭和13年8月 

スマイルの広告
この広告から、当時の日本はかなりスモッグがひどかったことが分かる。イラストは工場から排出される煤煙が眼に影響するというストレートな表現であるが、しかし、公害という認識ではなく、工場の力強さが感じられ、銃後国民は戦争遂行のために挙国一致で生産に邁進せよというメッセージが潜んでいるようである。

内容
「新眼科薬スマイル 煤煙(ばいえん)塵埃(ほこり)から眼を護る!
事変下の銃後国民に眼病の増加が警戒されて居ります 煤煙や塵埃の多い場所で働く人達に、眼の健康の爲にスマイルをお奨めします
結膜炎 都会人や工場人に最も多い眼病で眼が充血し目やにが出ます。スマイルが大変よい効果をあげます
トラホーム これは農村にも大変多い伝染性眼病で、瞼の裏に赤い顆粒(つぶゝ)ができます。スマイルが有効です。
疲れ目にも 仕事や読書で眼が疲れた時のスマイルの効果は爽快です。眼の疲れが軽快して眼がサッパリと快くなります。
二十五銭 四十五銭 薬店にあり 総代理店 株式会社 玉置商店 東京・大阪」  
掲載:昭和14年1月 

小松痔退座薬の広告
非常時と痔の治療を結びつけた上手い広告。痔をを治さなくては、この非常時に役に立たないということを前面に押し出している。不気味なイラストも「じorぢ」をイメージしたものか。
内容
「まづ痔を癒して!  勤労奉仕も余暇善用も痔が悪くては問題にナラン
▽総力戦の非常時だからまず体力がものを云う、何をするにも「痔」のためにお役にたたないとあっては申訳けがないまづ痔を治してからである。〜 
内痔核・痒痔・裂痔・痔出血・脱肛痔瘻に良効あり
 薬価二十銭・五十銭 一円・二円・薬店に有
株式会社 玉置商店 東京・大阪」
掲載:昭和14年9月 

小松痔退膏の広告
支那事変処理に苦慮していた御時世を「痔変処理」としたパロディーである。イラストも皇紀2600年たつ年を表す龍に「ぢ」がまたがるという何ともユーモアあふれる広告である。

内容
「今年こそ痔変処理に断固邁進せん!
▼人的資源総動員だ。痔疾のためにその能力を損じてはならない。是が非でも今年は痔を治していただきたい。〜 ▼小松痔退膏は、痛みや痒みを止めるだけでない。患部から悪血毒素を吸収して、排出するにある。組織の活動を活発にして次第に患部を収縮させ治癒に至らせるのである。〜 小松痔退膏」
掲載:昭和15年2月 

せきの一ぷく薬の広告
なんでもお国のため、いよいよ「健康」もというご時世。当然広告に利用する会社が現れる。

内容
「一億一心健康報国  痰.喘息.百日咳に 純和漢薬の製剤 穴山せきの一ぷく薬
◎子供の咳は殊更注意 ◎手当は早く軽いうち ◎尽くせ手当はなおるまで 
穴山せきの一ぷくは薬は左記の諸症に適応し効果速やかにして絶対副作用なく一般患者は勿論幼、小児、産婦等にも服用なし得る理想的鎮咳去痰の最良薬なり。   主効 〇痰咳 〇喘息 〇百日咳 〇カゼ咳 〇肺病より起る咳 〇空咳 〇小児咳 〇熱咳 〇咽喉痛
 〜 本舗 信隆堂」
掲載:昭和16年1月 

エビオス錠の広告
戦時体制下、国民生産力を上げるためには、国民がみな健康で働けなければならない。そのために、様々な栄養剤・薬が販売され、栄養補給には必須、をうたう広告が氾濫していた。

内容
「能率向上は健康から  健康 あってこそ肉体的にも頭脳的にも、全力を発揮し得るものです。 
常に健康であるためには、毎日適度の休養と、充分な睡眠が必要ですが、更に大切なのが栄養の補給です。特に白米を主食とする日本人にはビタミンB複合体の補給が急務です。〜 激務家に 従って健康であるためには、いつもこの成分を補給すべきですが、特に激務にたづさわり、体力を酷使される人には不可欠のものです
 〜  エビオス錠 エビス・アサヒ・サッポロ・ユニオン麦酒醸造元 大日本麦酒株式会社 東京市日本橋区本町二丁目 株式会社 田辺元三郎商店 大阪市東区道修町三丁目 株式会社 田辺五兵衛商店」
掲載:昭和16年4月 

サロメチールの広告
国民体力法という法令まで制定され、体力向上が必須の時世であった。そのため、ハイキングが大流行であり、それを狙った広告。
内容
「歩け!
足取り軽く、野を…山を跋渉して鋼の如き逞しい肉体を鍛えましょう
然し、打った、挫いた、疲れた、痛む、…と言うときの用意にサロメチールだけはぜひお忘れなく…
サロメチール 五十銭・一円 東京・大阪 田邊商店」
掲載:昭和16年4月 

ネオ肝精の広告
強壮剤の広告であるが、何の脈絡もなく国力増強に向けた貯蓄促進のコピーが添えられている。これも時代なのであろうか。

内容
「弾丸(タマ)もタンクも貯蓄から・・
ネオ肝精 酷暑時の胃腸衰弱に! 補血強壮 肝臓製剤 賞讃される膽汁の活用 〜 」
掲載:昭和16年6月 

ロート目薬の広告
内容
「日本人の眼は世界一!  権威ある眼科学者の研究に依ると、日本人の眼は機能的にも構造的にも世界一優秀であります。 眼が黒くて光線に強い事、上瞼が厚くて保護作用や保湿の完全な事、眼窩が浅く視野の広い事、色の判断が正確な事等がその主な理由に挙げられて居ります、斯くの如く優秀な眼を授かり乍ら眼を粗末にするために眼病の多い事は誠に勿体ないと言わねばなりません。 ロート目薬は出来るだけ簡便に、緩和に、そして迅速に眼病を治すため、収斂 鎮痛、消炎、防腐、殺菌の五作用を総合的に□□出来る用永い間研究され、完成された目薬でありますから万一眼に故障が起きたならば先づロート目薬を点眼して下さい。之は眼の保健に携る私共の切実なお願いです。
【適応症】 結膜炎・トラホーム・角膜炎・疲労眼・学校眼炎・□眼瞼炎・角膜□・結膜充血・麦粒腫 小瓶二十銭 大瓶三十銭 徳用五十銭 小児用二十銭 
全国到る處の薬店にあり 本舗 山田安民薬房  シマズ イタマズ ロート目薬」
掲載:昭和17年3月 

エーデー軟膏の広告
今でいうオロナイン軟膏の様な位置づけか。「瓦」は「g」のことである。

内容
「工場衛生 産業戦士の日常外用薬として最適の条件を具え、従来の軟膏剤に優る効果
すり傷 切り傷 外傷一般 エーデー軟膏は農林省水産試験場創製のエーデーを主剤い、特にビタミンの肉芽形成促進作用と創面の抗菌力増強作用が著しいので、きづが□□□に癒え、殆んどあとを残しません!〜
薬価 一〇瓦 三十銭・五〇瓦 一円 販売元 わかもと本舗 製造元 水産化学工業株式会社」
掲載:昭和17年10月 

やつめホルゲン球の広告
同じ死ぬなら戦って死ね!ということ。

内容
「敵弾(たま)に死すとも 病に死すな!
戦争は是からが愈々本筋だ。病気などに負ける弱い身体で、どうして敵を撃破できるか。一億国民老若男女ひとり残らずが敵弾に死ぬとも病に死なぬ鉄石の健康体を今こそ作らねばならぬ。八目鰻はこんな場合、泉のような根気、精力と〜
体力・視力の栄養に やつめホルゲン球  販売元 わかもと本舗 製造元 北海道水産化学工業株式会社」
掲載:昭和17年12月 

スッポンホルモトの広告
昔から精力増強といえばスッポンが知られているが、これに高麗人参を加えたというありがちな栄養剤。世情に合わせて売り込もうという作戦である。
内容
「戦いはこれからだ  長期戦は先ず体力の改造から 
むづかしい学理的な説明はさておいて、スッポンの薬効は国民学校理科書に明記されているほどです。 本剤は何方にも飲み易く高貴な高麗人参や其他の収斂剤を配合した□□的な強力栄養剤として好評です。
栄養強壮剤 スッポンホルモト 定価 一・五円 三円 五円
薬店デパートに有り品切れの際は直接本舗へ御申込み下さい
東京本所向島〜  合資会社 スッポンホルモト〜」
掲載:昭和18年1月 

エーデーの広告
栄養剤の効能は、病気予防、健康増進、体力増強から更に進んで、療養期間短縮と深化している。
内容
「療養期間の短縮
体栄養を充実し、抗菌造血の治療力を培う……結核・妊産時の貧血・弱視等、ビタミンADのみならず、その他のビタミン(B2)・ホルモン・栄養素を必要とする時……本剤は一剤で最も簡易にこの目的に合い、療養期間を早める効があります。
肝油よりはるかに栄養豊富  農林省水産試験場創製
水産化学工業製造」
掲載:昭和18年1月 

錠剤イーストの広告
イースト菌、いわゆるパンの原料となる酵母菌であるが、薬になるとは…。
内容
「生産拡充も健体から 胃腸病・衰弱体解消 イースト工業時代
のめばのむほど元気が充実して働いても疲れぬ身となる
イーストをのんでいると、かなり激しい肉体労働を続けてもその疲労度が少なく、且つ疲労が極めて速く解消されます。従来の滋養強壮剤とか胃腸薬のなかには一時的の薬効はあっても、もしも継続してのんでいると、身体に慣れて効力が見えなくなる品もありましたが、イーストばかりは、いくら用いても絶対に害はなく、のめばのむほど、全身の老化細胞がのぞかれいはゆる、新陳代謝が盛んになるので、若い人は勿論中年以後の衰えの来た身体でも元気が充実して来ます。 イーストは、イースト菌という微生物を応用して菌力を活性「生きた□」で内服になるように造り上げている点、□□界に誇るべき成功品であります。
錠剤イーストは二円・五円にて全国有名薬店にあり。」
掲載:昭和18年2月 

ロート目薬の広告
衝撃的な広告である。鬼畜米英を超えた表現で国民の敵愾心を煽る献納広告である。
内容
「俺の墓に奴等の生膽を供えて呉れ
こういう悲壮な言葉を残して死んだ戦友がある。 生死を超越した戦いに笑って散るのを武士道とする皇軍をして、かくも憎悪と怨恨とに満ちた最期の言葉を吐かしめた敵兵の残虐の業所を聞いて、満身に湧返る憤怒を禁じ得ないではないか。 我々は多くの実例から敵は絶対に文明人にあらずして戦場倫理さへも弁へぬ未開の種族、鬼畜にも劣る色白き蛮族であることを知った。かゝる蛮族は地球上から抹殺しなければならぬ。 今この敵が我々の前に立ちはだかって、日本の自存自衛を脅かすどころか我々、一人一人の息の根を止めようと企てゝいる。徒に昂奮してはならぬ。我々は三千年来の厳かなる闘魂を呼覚まし、一閃直ちに 敵の生膽を抉る破邪の剣を抜こう。
ロート目薬本舗 山田安民薬房」
掲載:昭和18年4月 

エーデーの広告
肋膜炎はポピュラーな病気であったのであろう。また、効能に衰弱とあるのも吃驚。
内容
「産業戦士の肋膜炎 最も確実なる栄養療法にが肝油よりも栄養豊富なエーデーを〜
肝農林省(水産試験場創製……の)結核療養剤
水産化学工業製造」
掲載:昭和18年4月 

イースト錠剤の広告
良くわからない広告である。広告主が先ずない。イースト菌の錠剤であることはわかるが、品名もない。薬店に売っていることがわかるのみである。「マルキイースト菌研究所」とは、日本で初めて昭和2年に設立された製パンのための国産イースト菌の研究機関である。今と違って、背が伸びるよりがっちり体形が好まれた。兵隊として産業戦士として役に立つ身体が求められた時代であった。子どものイラストにイーストの文字を被せてあるのは面白い。
内容
「ひょろ長い子は菌剤を与えたら肥る!! 新鮮錠剤
いくら栄養を摂らせても背丈ばかり伸びてヒョロヒョロと元気のない痩せた子供も、イーストをのませると、□質が甦ったようにガッチリと肥ると経験あるお母様方は賞用されているが、イーストは京都府東宇治マルキイースト菌研究所が純粋培養せるサッカロミセス菌□にて、胃腸を健全にしグングン肥いせる、特にイーストの豊富なる成長ビタミンは発育にめざましき効果を発揮する。菌価二円十四銭五□□十五銭 薬店にあり。」
掲載:昭和18年8月 

やつめホルゲンの広告
本土空襲は1年後になるのだが、空襲の備えは早くから整えていたことになる。しかし、あれだけの被害が出たということはどういうことか?
内容
「いざ空襲  と云う場合 連日連夜不眠不休で平然と頑張れる強い身体に鍛えて置こう!それには…
平常から身体に体力精力の素になる栄養を充分に貯えて置く意味に於て八つ目鰻の精を毎日の食事のほかに少量づつ用いるなど極めて有効です。やつめ肝油球ホルゲンは形こそ豆粒ほどのものですが、〜
やつめ肝油球ホルゲン  定定(税共、三十五日分三円二十一銭・六十日分五円三十五銭・百日分八円五十六銭〜」
掲載:昭和18年9月 

有田ドッラグ商会の広告
有田ドッラグ商会とは、性病薬販売で名を馳せた有田音松氏が設立した会社。ネット調べると偽薬をやらせ広告で販売し大儲けしたが、いつのまにか姿を消したそうである。また、今のドラッグストアチェーンの魁であったらしい。
内容
「撃滅だ結核  肺肋膜専門薬 有田別製治肺剤
全国各地の有田ドラッグ専売所のみにて販売す
有田ドッラグ商会 大阪 心斎橋 東京 日本橋」
掲載:昭和18年12月 

龍角散の広告
龍角散とは元秋田佐竹藩の藩薬であったが、明治26年藤井得三郎が粉末の処方を完成し商店を開業。広告を積極的に展開し、全国的な認知度を得た。昭和39年社名を龍角散に変更し現在に至る。今は咳声喉にがキャッチフレーズだが、昔は痰咳喘息であった。
内容
「こんな処に敵が居る
一機、一艦、一発でも多く前線へ送れと老若あげて大活躍中の我々を内部から脅かす大敵……それはたんせきであり喘息である。この病気の糸口は大てい風邪だがひとたび取りつかれると〜
たんせきぜんそく龍角散 鎮咳去痰 
本舗 東京神田区豊島町 株式会社 藤井得三郎商店」
掲載:昭和18年12月 

イースト錠剤の広告
イースト菌を使った栄養剤である。筋骨薄弱者は悪であるかのような書きぶりであるが、男子の本懐が兵隊として国に殉じることと信じられていた時代である。強い身体が求められていたため、身体を壮健にするという栄養剤が持てはやされた。しかし、栄養剤だけでは、筋骨は鍛えられないので、今では誇大広告となろう。内容からみて昭和18年2月の広告と同じ会社である。
内容
「肉が肥り骨も太る  胃腸病 結核 腺病質 貧血 衰弱体
一億が戦闘配置に就かんとする時、徴兵検査の青年に未だ相当数の筋骨薄弱者がいたという。純粋培養イーストは胃腸強化及び肥る素として賞用されているが、肉質のみでなく骨まで太る奏功が理想的である。之は強力なるプロビタミンDの作用である。二円十四銭 五円三十五銭 薬店にあり
□□イースト錠剤 〜」
掲載:昭和19年1月 

オバホルモンの広告
健康なことが増産に繋がる。健康のためにはオバホルモンという趣旨。大正9年6月に横浜で創業した帝国社臓器薬研究所が発売していた薬。妊娠した馬の尿から抽出した女性ホルモン薬で、生理痛のほか不眠疲労防止と作業力振起にも効くとして人気を集めていたらしい。
内容
「健康明朗  必勝増産へ! 帝国臓器の女性ホルモン オバホルモン 製法特許 注射・内服・パスタ」
掲載:昭和19年4月 

フルチ錠の広告
健康報国をうたった広告。フルチ錠とはよく分らないが、昭和32年の広告では、発売元はアジア製薬となっており、効能が「浄血と除毒」となっている。
内容
「職場も戦場  健康第一 銃後の務め
動悸、息切れ、頭重 のぼせ、めまひ、夜分ねね苦るしい、肩凝り ね汗、冷汗、記憶・根気の減退、手足の痺れ□み 等。
増産に健康は絶対必要。其の健康がナゼむしばまれるかと申せば、大半は血行障害に原因し、血管の硬変を起しているのを普通とします。是ぞやがて高血圧から脳溢血へと移行する前兆。〜
高血圧にフルチ錠 東京・京橋 古醫學研究所」
掲載:昭和19年5月 

やつめホルゲンの広告
ヤツメウナギは今でも健康食品として人気だが、貯蓄360億に絡ませるとはさすが戦時広告である。
内容
「360億貯蓄は健康が根本 やつめホルゲン
補血強壮 ヤツメ鰻のビタミンAD 栄養障害ビタミン欠乏に基因する 夜盲症 腺病質・虚弱児 血色わるき人 病後産後の衰弱
説明書申込先 東京都四谷区新宿二丁目 北海道水産工業株式会社〜」
掲載:昭和19年7月 

有田製薬の広告
この会社は、大阪の製薬会社で創業は明治38年1月22日。前身は有田音松が創始した有田ドラッグであり、インチキ性病薬で大儲けしたらしい。昭和2年に病理の栞という冊子を出している。性病薬をはじめ、胃腸薬、目薬、心臓薬など様々な薬を製造している。因みにオミットとは下疳の治療薬である。
内容
「命倍増 一億健康必勝
オミット 胃腸薬 アリタ目薬 治肺薬 治淋薬 心臓剤  有田製薬株式会社」
掲載:昭和19年9月 

オバホルモンの広告
4月以来の広告。内容を変えてきており、生理を調整することで欠勤をなくし、増産へつなげるという趣旨か。現在はピルが有名
内容
「女性生理調整 無欠勤増産へ! オバホルモン 帝国臓器の天然卵胞ホルモン 製法特許」
掲載:昭和19年9月 

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