北京籠城軍艦愛宕戰死者碑(馬門山墓地)

軍事遺物
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明治34年5月に小屋の台の忠魂祠堂の境内に建立されたが、大正大震災により堂宇が破損したため、昭和7年8月に馬門山墓地に移されたものである。忠魂祠堂も光心寺へ再建された。碑前面には海軍大将伊藤祐享による題額と愛宕艦長 海軍中佐 竹内平太郎撰并書による碑文が刻まれている。台座の周囲には紀念碑建設者の氏名が刻まれている。
明治33年の北清事変の際、北京の公使館区域の籠城戦に軍艦愛宕の陸戦隊が参加、死者5名、重軽傷者多数を出したが奮戦し、帝國海軍の栄光を高めた。その戦死者5柱を合祀する慰霊碑である。なお、碑の前面左右には砲弾、右脇には錨が添えられている。
碑高230p、幅211p、厚さ30p 台石(2段)84p、台座112p。
所在:馬門山墓地(横須賀市)

(刻字)
・碑正面:
「北京籠城軍艦愛宕戦死者碑
海軍大将正三位勲一等功二級子爵伊東祐亨題額
世ノ海軍ヲ言フ者長風ヲ凌キ鯨涛ヲ蹴リ敵艦ヲ砕クヲ知ルモ時トシテ 陸軍ノ津梁ト為リテ彼岸ニ濟タスヲ知ラス或ハ之ヲ知ルモ時トシテ銃 劔ヲ提ケ隊伍ヲ結ヒ血ヲ□ミ猛進スルヲ知ラス蓋シ海戰ハ海軍軍人ノ 固ヨリ快ト為ス所ナルモ陸軍掩護陸戰隊ニ至リテハ却テ險難コレヨリ 甚シキ者アリ明治三十三年北清拳匪ノ乱興ルヤ軍艦愛宕警備ノ任ヲ帯 ヒ大沽ニ在リ五月三十一日急報ヲ得テ北京帝國公使館及居留民保護ノ 爲メ海軍大尉原胤雄ヲシテ陸戰隊二十四人ヲ率ヰ之ニ赴カシム巳ニシ テ賊勢潮ノ如ク銃砲ヲ放チ劔戟ヲ揮ヒ四面薄リ攻メ各國公使館重圍中 ニ陥ルモノ六十餘日所謂千百盡ルニ就クノ卒ヲ以テ百萬日ニ滋キノ師 ト戰フ時會天熱シ瘴氣滿地糧盡キ彈空シク面貌□黒肉落チ骨立ツニ至 ルモ勇氣凛然毫モ屈スル色ナシ初メ英公使□親王府ノ守ラサルヘカラ サルヲ□言スルヤ各國兵皆難色アリ我兵進ミテ克ク之ヲ儼守セリ英獨 墺各國公使館ノ急ヲ告ルヤ我兵走リテ之ヲ援ヒ毎ニ奇功ヲ奏セリ而シ テ我陸戰隊中命ヲ殞ス者二等水兵鎌田萬次郎同河内三吉三等水兵町野 兵右衛門同磯貝桑蔵同田佐太郎其佗重傷者九人軽傷者七人恙ナキ者 僅ニ四人ノミ呼嗟烈哉抑此役ヤ敵ハ烏合ノ衆ニシテ歯牙ニ置クニ足ラ サルモ欧米各邦聯合軍ト肩ヲ竝ヘ踵ヲ接シ猛進奮闘啼ニ其背後ニ落チ サルノミナラス斗大ノ膽英霊ノ氣一種大和民族ノ異彩ヲ發揚シ彼輩ヲ シテ瞠若タラシメタルハ義勇兵ノ忠義ニ出ツルト雖モ之カ首力ト爲リ テ率先セル我陸戰隊ノ功ニ歸セサルヘカラス且開戰第一各國兵ニ挺進 シテ大沽砲臺ニ旭旗ヲ樹テタルモ我海軍ニシテ北京籠城中首力ト為リ タルモ亦我海軍ナレハ實ニ帝國海軍ノ光榮ト謂フヘキナリ爰ニ僚友相 謀リ碑ヲ建テ以テ諸子ノ英霊ヲ祭リ其偉勲ヲ千載ニ傳フト云フ
 明治三十三年八月
    愛宕艦長海軍中佐正六位勲五等竹内平太郎撰并書」
・台石正面:
「紀念碑建設者 軍艦愛宕
海軍中佐 竹内平太郎 中佐 和田賢助 大尉 □□小三郎 大尉 原□雄 大尉 市村忠□郎
大軍醫 美濃部録治 中尉 大瀧新蔵 中機関士 笠井友一 仝 檜貝秀次郎 中主計 齋藤芳太郎
上等兵曹 田中笑之丞 上等機関兵曹 岩村榮吉 上等筆記 加藤錠次郎
一等兵曹 江村俊男 田中仙太郎  一等機関兵曹 福永太平治 棟方男次 一等兵曹 弘中重吉
一等鍛冶手 三谷寅吉  一等舩匠手 渕脇正八 大崎市蔵
ニ等兵曹 岡田瀧次郎 小和田周吉 大内太利治 石川権治 平嶋齊之助 山本松蔵
ニ等信號兵曹 岡本治三郎  ニ等看護手 山□□次郎
ニ等機関兵曹 佐藤鶴吉 竹内岩太郎 倉田房次郎  ニ等鍛冶手 布施田清松
ニ等厨宰 渡邉重次郎  ニ等筆記 原川豊□  三等兵曹 隆譲
三等機関兵曹 橋万次郎 濱田雄彦  三等機関兵曹 加藤□之□ □  藤田□
三等兵曹 佐藤政□  三等信號兵曹曹 木戌太□  三等筆記 粕谷俊男
清國天津 伊藤佐一郎 仝    末
一等水兵 佐□ □ 淺田 倉又□□ 鈴木万之助 和喜多正次 佐賀留五郎 増田源左久
     内山治三郎 実方健次郎 荒嶋清五郎 益川庄三郎 本田勘平 星野惣次郎
一等信號兵曹 池田鶴蔵 三田定吉 玉置喜□ 片岡登三郎
一等機関兵 志村健吉 中島芳□郎 齊□ 奥村□ 山本勇□□ 片岡□三郎  只野繁治
      中幡市三郎 齋藤雄陽 川上五太郎 本田三子三」
・台石左面:
「一等機関兵 今村藏太  一等信號兵 小泉康次郎  一等木工 野村市治郎 江口力吉
一等看護 柳澤千代蔵  一等主厨 下山利平 片山□蔵
ニ等水兵 長島治郎松 間瀬淺治郎 内海幸四郎 渋谷宇吉 小林磯吉 清水竹五郎 草薙善次
     ア彦吉 野勢末松 佐藤勝之助 吉田吉之助 阿部寅治 山下与太郎 舟木為吉
     関卯兵衛 安西藤七
ニ等機関兵 川名九十郎 牧榮吉 佐藤吉内
ニ等機関兵 佐藤弥七郎 佐藤与蔵 志藤与七 矢口朝次郎 堀内秀松 舛山金蔵 鈴木建藏
      横山品吉 鈴木雅樂 堀秋次 別府忠五郎 五十嵐穆
二等信號兵 田ア敬次郎  ニ等鍛冶 桑本久太郎  ニ等主厨 弓田保二
三等水兵 阿久津辰之 田邉寛敏 奈良徳次郎 山田亀蔵 吉田源助 佐々木喜代治 川又堀□
     宮谷金蔵 小林虎松 水谷庄九郎 櫻□□□」
・台石右面:
「三等水兵 榎本又吉 鷲見時次郎 九山百吉 菅原勇右衛門 堀籠喜四郎 傘田興左エ門
     若林仙蔵 栗本蔦之助 前田良之助
三等機関兵 三國要太郎 渡邉九十九 梅津壽重  三等水兵 小越宇惣次  三等木工 倉田亀若
三等看護 荒井啓三郎  三等主厨 津村林之助 小野田延三 吉村勘二  四等水兵 圷幾之助
四等機関兵 藤本□蔵  根本敏成 鈴木順 弓ア数夫  四等鍛冶 森岡惣六 大庭米一
制夫 中山重正  割烹 中岡澤太郎  給仕 小林正一 三宅憲□  従僕 樋口榮太郎
明治三十四年五月建立」

伊藤祐享による題額

左手砲弾

右手砲弾