口野(くちの)地区は、多比地域の東に隣接する地区である。引渡文書によると回天、震洋の格納壕が設けられていたが、実際の格納はなかったようである。
回天格納壕は、丸く突き出た岬の北西と南東の崖に計4本、他に燃爆庫が4本掘削されていた。
現在、北西の崖はコンクリート擁壁化とトンネル工事の影響で、遺構は消滅している。南東エリアは狩野川放水路の工事で形状が改変されている。立入禁止であるが、対岸から1本の格納壕の存在が確認できる。また、同文書ではこの岬の中央部に指揮所と通信壕の存在が記載されているが、ここも立入禁止のため未確認である。
狩野川放水路は昭和40年に完成したもので、そのため土地の形状は大きく変わっている。現況から判断すると、放水路出口付近に震洋格納壕が設けられていたと推測され、格納壕は完全に消滅した。